1997/98エルニーニョの海洋表面水温

エル・ニーニョは熱帯太平洋東部での海洋表面水温の異常昇温が特徴付なのですから,まずその表面水温表面水温を,20世紀最大のエル・ニーニョである1997/1998年のエルニーニョで見てみましょう.アニメーション1に,温度の時間発展を示します.上段の時間発展の時系列は,1982年10-11月に下段の四角領域(Nino34)で,海洋表面水温が平年に比べて最も暖かかったことを示しています.この水温上昇がはじまった様子を見ると,1997年の3月頃から,赤道太平洋の東部で温度上昇がはじまり,その温度上層が成長して西に張り出すことで,このNino34領域に暖かい変化をもたらしているように見えます.

このようにエル・ニーニョが海洋表面水温で見て東太平洋から始まる例はいくつか知られており,そのために,1980年代にはエル・ニーニョは東太平洋に起源を持つのではないか,と考えられたこともあります.しかしこの予想は,表面だけではなく海の中の水温変化を検討することで覆されました.では,この1997/98のエル・ニーニョにともなって,海の中の水温がどう変化したかを次に紹介しましょう.

アニメーション1. 1996年1月から1999年1月における,下段の赤い四角で囲った領域で平均した海洋表面水温の平年の値からずれ(上段),そして表面水温偏差の水平分布(中段).データは5カ月移動平均で平滑化している.つまり1996年1月と表示されているデータは,実際には1995年11月から1996年3月の平均である.下段の赤い四角の領域を,Nino34領域と呼び,エル・ニーニョの解析で広く用いられる.