数字 |
1.5層モデル (1.5そうもでる:1.5 layer model)
比較的薄い上層の運動を,その下に無限の厚さを持つ下層があると仮定して,浅水方程式系で表すモデル.連続成層との関連では,傾圧第一モードを表していると考えられることが多い.傾圧成分を表すのに最も簡単なモデルである.
1.5層モデルの式は
du /dt-fv = -g' dh/dx
dv /dt+fu = -g' dh/dy
dh /dt+h(du/dx+dv/dy)=0
である.ここでg'はreduced gravity と呼ばれる量で,上層の密度をρ,上層と下層の密度差をΔρとして,g'=gΔρ/ρ
で与えられる.hは上層の厚さである.浅水方程式と比較すると,浅水方程式のgがg'に置き換わっただけである.この特徴から,1.5層モデルはreduced gravity modelとも呼ばれる.なお,reduced gravityを逓減重力(加速度)と訳す場合もあるが,あまり一般的ではない.
また,速度の速い順圧成分の波を解かないので,数値計算的には時間ステップ幅を長く取ることができ,長期の数値計算が容易だというご利益がある.一般に最も速度の速い波は重力波だが,順圧の重力波はsqrt(水深×重力加速度)で表され,この速度は太平洋の平均水深である5000mに対しては,220m/sとなる.一方傾圧の重力波は.最も早い傾圧第一モードで2〜3m/sと考えられているので,2桁速度が異なる.CFL条件から,システムの中で最も速い波の速度がを分解できるように時間ステップ幅を取らなくてはならないので,順圧の数値計算に比べて,1.5層モデルの時間ステップ幅は二桁長く取れる.
[au=見延][dt=2001年04月04日][level=1]
1層モデル (1そうもでる:1 layer model)
薄い流体の上から下までが同じ様に動くと仮定したモデルのこと.1層モデルの方程式系は,1.5層モデルや鉛直モード展開されたモードと共に,浅水方程式系である.
[au=見延][dt=2001年04月04日][level=1]
→鉛直モード展開、 浅水方程式、 2層モデル、 1.5層モデル
[←先頭へ]2層モデル (1そうもでる:2 layers model)
運動する上下2層からなるモデル.1.5層モデルでは陰に下層の存在を考えていたが,2層モデルではあらわに考える.この結果,順圧モードと傾圧モードの両方が表現でき,また流体下面の地形(海なら海底地形)の効果も扱うことができる.鉛直モード展開は線形化が必要であるが,2層モデルは線形でも非線型項を含んだままでも構築できる.これらの特徴から,順圧モードと傾圧モードのモード間結合,特に地形と相互作用してモード間の変換が生ずる場合に,非常に効果を発揮する.この発展形としては多層のモデルがある.
[au=見延][dt=2001年04月04日][level=1]
A |
ADEOS-II (あでぃおす・つー:ADEOS-II)
2002年度後半に打ち上げ予定の衛星の名前,Advanced Earth Observing Satellite-II .詳しい説明は,宇宙開発事業団のアディオスのHPで.いろいろセンサーがついているが,海的に特に期待されているのは,水温・降水量などが分かる高性能マイクロ波放射計(AMSR),風向・風速が分かる海上風観測装置(SeaWinds),クロロフィル量が分かるグローバルイメージャ(GLI)というところだろうか.
初号機(ADEOS, 「みどり」の愛称の方が知られているかもしれない)は,貴重なデータを提供しつつも,故障によって運用停止された.
adiabatic (アディアバティック:adiabatic)
周囲と熱の交換がないこと.
[au=見延][dt=2001年05月02日][level=1]
advection resonance (あどべくしょんれぞなんす::advection resonance)
Saravanan and McWilliams (1998 JCLM) が提案した,大気の外力が構造をもっていれさえすれば,大気変動の時系列がwhite noise でも海洋は,周期的な応答をするという理論.簡単なシステムで説明できるのが魅力.移流のかわりに波でも変わらないはず.ただしこの理論では,大気変動は周期性をもたずに,海洋変動のみ周期性を持つということになる.
[au=見延][dt=2001年6月23日][level=3]
arctic halocline (あーくてぃっく・はろくらいん:arctic halocline)
50-200 m に分布する塩分躍層(密度躍層でもある)
最近弱くなっていることが注目されている。
[au=見延][dt=2001年04月04日][level=3]
ARGO計画 (あるごけいかく:ARGO Project)
全球に3000本のプロファイリングフロートを展開して,世界の海洋を高い精度で観測しようとする計画.高頻度・高密度・リアルタイムの観測が可能になると期待されている.
[au=見延][dt=2001年6月22日][level=2]
Asselin フィルター (アセリン・フィルター:Asselin filter)
Asselin (1972) フィルター
leap frog における計算機モードの除去のために用いるフィルター.昔はこの目的のために,何十回に1回計算機モードを持たないスキームを使うのが主流だったが,最近はAsselinフィルターの方がよく使われている.具体的には,
u(n)=(1-2ε)u'(n)+ε(u'(n+1)+u(n-1))
である.u'(n)とu(n+1)' 以下の様に通常の leap frog で求められたフィルター前の変数である
u(n+1)'=u(n-1)+2Δt adv(n) + 2Δt dif(n-1)
ここで,advは移流(advection), diffはdiffusion である.
εとしてはCCSR/NIES大気モデルでは0.05が使用されている.
Asselin, R., 1972: Frequency filter for time integrations.Mon. Weather Rev., 100, 487-490.
[au=見延][dt=2001年12月14日][level=3]
B |
Besis (ベーシス:Besis)
Bering Sea Impact Studyの略.ホームページはhttp://www.besis.uaf.edu/.ベーリング海といいながら,陸のことばかりしている印象...
[au=見延][dt=2001年08月26日][level=3]
C |
C14 (C14:C14)
炭素の同位体の一つ.C14は、上層大気中で作られているため、古い深海の水中では減少している。サンゴにおいてこの炭素同位体の比率を調べることで、長期間の炭素交換の記録を得ることが出来る。つまり深海の湧昇流が表面にまで達しているかどうか情報を得ることができる。Druffel(Science March 7, 1997, Vol.275, p.1454)によれば、バーミューダのサンゴは、10年単位でC14とC12の比率が変化しており、これは、過去において何回かの表面水と深海水との短期の混合があったことを示している。
[au=見延][dt=2001年6月22日][level=2]
CFC (クロロフルオロカーボン:CFC)
フロンのこと.人間活動が放出しているので,この濃度情報から十年~数十年程度の時間スケールで,水塊の古さを推定することができる.CFC-11, CFC-12, 両者の比を用いる,3通りの推定方法がある.1995年に生産が中止されたらしい(日本だけ?).
[au=見延][dt=2001年04月04日][level=2]
CLIVAR (クライヴァー:CLIVAR)
Climate Variability and Predictability が正式な名前である.全球の気候の変動とその予測可能性を明らかにするプロジェクト.主要な3つのテーマ・時間スケールは
1)エルニーニョ
2)10−100年変動
3)人為活動起源の気候変動
の3つである.
なおIUGG99 (イギリス・エジンバラ,1999年7月)では,Ocean/Atmosphere Climate Variability and Predictability という1週間のシンポジウムが開催され,不肖見延も英仏のコンビナーと共にコンビナーを努めさせていただいた.この名前はもちろんCLIVARを強く意識したものだが,CLIVARと連携があったかと言えば全然なかった.
[au=見延][dt=2001年6月22日][level=2]
CMAP (シーマップ:CMAP)
CPC Merged Analysis of Precipitation (CMAP) と名づけられた,雨量計・衛星・NCEP/NCAR再解析データから作成された,2.5×2.5月毎の降水量グリッドデータ.1979年以降.この期間ではおそらく,もっとも良いグリッドデータではないかと思われる.
Standard version は NCEP/NCAR reanalysis が含まれておらず,enhanced version には含まれている.したがって,standard version では欠損があり,enhanced version には無い.
Xie and Arkin, 1996: Analyses of Global Monthly Precipitation Using Gauge Observations, Satellite Estimates, and
Numerical Model Predictions. J. Climate, 9, 840 -858.
Global Precipitation: A 17-Year Monthly Analysis Based on Gauge Observations, Satellite Estimates, and Numerical Model Outputs. Pingping Xie, and Phillip A. Arkin, pages 2539-2558.
COADS (コアーズ:COADS)
Comprehensive Ocean-Atmosphere Data Set の略.海上気象観測で得られた,SSTやSLPのデータセット集である.個々の観測と,それから作成した2度×2度×月のデータがある.
またCOADSのデータ(個々の観測)は他のデータセット作成にも用いられている.例えば,da Silva らが作成した1度×1度×月のsurface marine atlas はCOADSデータを用いている.
[au=見延][dt=2001年6月22日][level=2]
cold halocline retreat (コールド・ハロクライン・リトリート:cold halocline retreat)
Steele and Boyd (1998)が北極のcold haloclineが弱まっていると報告。
[au=見延][dt=2001年6月22日][level=2]
complex EOF analysis (コンプレックス・イーオーエフ・アナリシス:complex EOF analysis)
EOFを複素数に拡張したもの.すべての変動を定在振動でしか表現できないEOFと異なり,伝播現象を検出することができる.伝播現象を検出できるEOF系のテクニックとしては,他に,EEOFやSSAがある.
[au=見延][dt=2001年6月22日][level=2]
→Extended EOF (EEOF)、 Singular Spectrum Analysis (SSA)
[←先頭へ]cyclo-statonary EOF (サイクロ・ステーショナリー・イーオーエフ:cyclo-statonary EOF)
[←先頭へ]
D |
delta-D (デルタD)
降水量の指標になる,水素同位体.Sauser 2001 が植物プランクトン起源の有機分子のδDが,その生息水域のδDを代表することを示した.
[←先頭へ]diabatic (ディアバティック:diabatic)
周囲と熱の交換があること.ギリシャ語のdiabat=横切ることができる,から来ている.
[au=見延][dt=2001年05月02日][level=1]
Dicho-thermal layer (だいこさーまる・れいやー)
中冷水.海の中で上下よりも冷たい水の層.
E |
ENSO
海洋のエルニーニョと大気の南方振動をあわせて、ENSO (エンソ El Nino/Southern Oscillation)と呼ぶ。
[au=見延][dt=2001年3月23日][level=1]
EOF (イーオーエフ)
Empirical Orthogonal Functions,これを直訳して日本語では経験的直交関数展開と一応なるが,まだらっこしいので普通はEOF(イーオーエフ)と日本語の発表等では呼んでいる.多変量解析で言うところの,主成分分析と同じもの.EOFは時間・空間に分布する,大気や海洋の変動を取り出すのに最も広く用いられる手法である.今日の気候変動解析で,最も基本的(相関の次,スペクトルと並ぶくらいか)な2・3の手法の一つだろう.
EOFを簡単に説明しよう.独立変数を時間(t), 空間(x)として,従属変数がu(t,x)であるとする.このuを,時間関数T(t)と空間関数X(x)に変数分離すると,
u(t,x)=sum_n T_n(t) X_n(x)
と書くことができる.ここで,nはn番目のモードを示す.この際に,まず,第一モードで最大の分散が説明できるT_1, X_1 を選ぶ.次に,観測された変動から第一モードで説明される変動を除いた分について,第二モード最大の分散を説明するようにT_2, X_2 を選ぶ.以下同様にして,時間のステップ数か空間のステップ数の小さい方の数と同じだけのモードについて,T_n, X_nを選びつくす.
実際の計算では,上のように1モードづつ計算するのではなく,相関係数行列の固有値・固有関数を求めることで,一気にX_nが求めるのが普通.[au=見延][dt=2001年3月23日][level=2]
→Singular Spectrum Analysis (SSA)、 Singular Value Decomposition (SVD)、 北極振動、 North のRule of Thumb
[←先頭へ]Extended EOF (EEOF)
→complex EOF
[←先頭へ]G |
GEWEX (じーべっくす?)
Global Energy and Water Cycle Experiment.全球エネルギー水循環研究計画
[←先頭へ]GISST (ギスト)
Global sea Ice Coverage and Sea Surface Temperature dataの略.UKMOから提供されている1×1度のSSTと海氷密接度(sea-ice concentration)のグリッドデータ.SSTは欠損がないくらいかなりヘビーに補間されているので,データ解析に使うには注意が必要.UKMOのFollandはデータ解析には使うな,と言っていたが,使っている人は結構いる(含む私).ただし,補間をしていないMOHSSTやCOADSのSSTとも比較して,基本的な結果が大丈夫というくらいのことは確認する必要がある.最近については,ReynoldsのOISSTの方が良いと一般には考えられている.また,MOHSSTなどでは欠損が多すぎる昔については,KaplanのSSTが良いとされているようだ.
海氷の方は,もともとはWalshのデータで,GICEは良いデータとして使っている人が多いように感じる.ただし,必ず時系列を書いて正しそうかどうかをチェックすること.グリッドデータを作るほどの観測がない時の海氷密接度は,グリッドが欠損値になるのではなく,季節変動だけになっている.
GISSTのホームページはここにある.
reference
Rayner N. A., E. B. Horton , D. E. Parker, C. K. Folland, and R. B., Hackett, 1996: Version 2.2 of the global sea ice and sea surface temperature data set, 1903-1994. CRTN44, Available from Hadley Center, Meteorological Office, Bracknell, UK.
[au=見延][dt=2001年11月13日][level=3]
GOASTA (ゴースタア)
イギリス気象局が1992年だったかな,に作成した全球SSTグリッドデータセット.5度×5度×月,でその後はMOHSSTとなって,version up が繰り返されている.観測データをあまり手を加えずにグリッド化している.現在のMOHSST ver.7 は HADSST ver (たしか)1と同じもの.HADSSTと紛らわしいHADISSTはGISSTの後継で,こちらはEOFを用いてヘビーな補間を行なっている.つまりHADSSTは観測がないところはSSTのグリッドデータも無いが,HADISSTでは適当な値を推定して埋めている.適当な値が大丈夫かというと,推定方法が異なるいくつかのSSTデータを比べると相互に違うという報告(Hurrel & Trenberth BAMS 2001, 2661-)もあり,やはり大丈夫では無い.
なおGOASTAやMOHSSTでは,Parker and Folland (1995 QJRMS)に基づいてSSTデータの観測手段の相違を補正している.この補正は前田@北大・理・修士や能登さんの研究によると,日本付近では小さすぎる可能性がある.
[au=見延][dt=2001年6月23日][level=3]
GODAE
Global Ocean Data Assimilation Experiment(全球海洋データ同化計画)
operational phaseのプレテストが実施されるようになった。これに対応してJapan GODAE Network設立構想が提案され、学術会議やIGOSでその実施が議論されている...らしい.2003-2005がintensive period.
[au=見延][dt=2001年6月23日][level=3]
H |
Hydrobase
等密度面ごとに品質管理を行い,作成した気候値データ.水塊の形成などを議論するには,等深度面上で平均すると,本来は存在しないTSの組み合わせが生ずるなどの問題があるので,hydrobaseのような等密度面上での平均化が望ましい.最初大西洋版がつくられ,太平洋版は須賀さん@東北大などが作成してMacdonald ら(2000)で報告されている.
[au=見延][dt=2001年3月31日][level=2]
I |
ICOADS (アイ・コアーズ:ICOADS)
International COADS. 2003年?から公開されている,海洋気象のデーター・セット.米国のデーターセットであった,COADSが国際化されたもの.
ICOADSのホームページはhttp://icoads.noaa.gov/
IGBP (あいじーびーぴー)
International Geosphere Biosphere Programme. 国際地球圏生物圏研究計画.
[au=見延][dt=2001年8月8日][level=2]
IMAGES (イメージーズ)
International MArine Global CEange Study.国際全海洋変動研究.高時間解像度で堆積物柱状コアを解析するプロジェクト.最短の解像度は1年〜10年.
[←先頭へ]impact factor (インパクト・ファクター:impact factor)
ある雑誌に掲載された論文が,どの程度引用されるかの指標.雑誌の格を表す数値として広く使われている.より具体的には,year0のimpact factor=前2年に発表された論文がyear0に引用件数/前2年の論文数.impact factor を上げるためには,例えば引用される率の高い論文を1月号に持ってくるのが良いテクニックとのこと.
主用な大気・海洋の雑誌のimpact factorは次の通り.右はじのカッコ内は調査年,年が示されていないのは調査年が不明.
3.882 Journal of Climate
3.761 Climate Dynamics
3.167 Bulletin of the AMerica Meteorological Society
2.744 Progress in Oceanography
2.719 Geophysical Research Letters (2000)
2.683 Quarterly Journal of the Royal Meteorological Society
2.670 Journal of the Atmospheric Sciences
2.477 JOURNAL OF PHYSICAL OCEANOGRAPHY
2.268 JOURNAL OF GEOPHYSICAL RESEARCH (2000)
2.261 DEEP-SEA RESEARCH PART I-OCEANOGRAPHIC RESEARCH PAPERS
2.082 MONTHLY WEATHER REVIEW
2.024 TELLUS SERIES A-DYNAMIC METEOROLOGY AND OCEANOGRAPHY
1.877 JOURNAL OF APPLIED METEOROLOGY
1.661 CLIMATIC CHANGE
1.451 BOUNDARY-LAYER METEOROLOGY
1.408 INTERNATIONAL JOURNAL OF CLIMATOLOGY
1.170 JOURNAL OF ATMOSPHERIC AND OCEANIC TECHNOLOGY
1.167 Fishery Oceanography
1.140 DEEP-SEA RESEARCH PART II-TOPICAL STUDIES IN OCEANOGRAPHY
1.048 ATMOSPHERE-OCEAN
0.983 JOURNAL OF THE METEOROLOGICAL SOCIETY OF JAPAN
0.719 GEOPHYSICAL AND ASTROPHYSICAL FLUID DYNAMICS
IPCC (あいぴーしーしー)
Intergovernmental Panel on Climate Change(気候変動に関する政府間パネル)の略記.IPCCは、1988年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)の共同で設置され,(1)気候変動に関する利用可能な科学的知見の評価、(2)気候変動の環境及び社会経済への影響評価、及び(3)対応戦略の策定に関してレポートを作成している.これらのレポートでは,その作成に参加したトップレベルの研究者が,それまでに得られた科学的知見を広く調査して評価を行なっている.これまで第一次〜第三次の評価報告書がまとめられており,最新の報告書は2001に出版された.第三次報告書の「政策決定者向けの要約(summary for policymakers)」は,気象庁のホームページにおいて,図付きで公開されている(多謝>気象庁).ただし研究面では,technical summary の方が有益だろう.こちらについては和訳は見つけていないが,原文はやはり図を含めてIPCCのホームページで公開されている.でも要約では参考文献がちゃんとしていないので,まじめに研究に使うには,レポート本体を購入する必要がある.またこれらの主要な評価報告書のほかに,技術報告書や特別報告書が取りまとめられており,英・仏・露・西語で,そしていくつかはアラビア語と中国語でも上のIPCCホームページで公開されている.日本語訳が無いのは悲しい.
[au=見延][dt=2001年7月21日][level=2]
Island rule (アイランド・ルール)
Godfrey (1989)が提唱した、島の周りの循環のつよさがその西の大洋上の風の場で決まるという法則。Pedlosky et al (1997, JMR 55 1199-1251), Pratt & Pedlosky (1998 JPO, 28, 2148-2162)辺りでfrictionの効果が議論されたみたい。Katsumata and Yasuda (2000 submitted toJMR) では傾圧モードを考慮した式を導いている.傾圧モードも含めると,この法則だけから流量を出すというわけにはいかないが,診断には利用できる.
Godfrey, J. S. 1989: A Sverdrup model of the depth-integrated flow for the world ocean allowing for island circulations. Geophy. Astrophy. Fluid Dyn., 47, 89-112.
IUGG (あいゆーじーじ)
International Union of Geodecy and Geophysics という地球惑星化学分野では,世界最大の組織.以下の7つのassociations(連盟)の集合体である.
IAG : International Association of Geodecy
IAGA: International Association of Geomagnetism and Aeronomy
IAHS: International Association of Hydrological Sciences
IAMAS: International Association of Meteorology and Atmospheric Sciences
IAPSO: International Association of Physical Sciences of the Ocean
IASPEI: International Association of Seismology and Physics of the Earth's Interior
IAVCEI: International Association of Volcanology and Chemistry of the Earth's Interior
4年に1度全体のmeeting (general assembly)が開かれ,その中間の年にIAPSO,IAMASなどの独自のmeetingが開かれる.夏のオリンピックと冬のオリンピックみたいね.この前のIUGG meetingは1999年イギリス・エジンバラ,次のIUGG meeting は2003年札幌.参加費は通常参加者で数万円と高いが,札幌では学生料金は抑えたいらしい.
[au=見延][dt=2001年6月27日][level=3]
J |
JEBAR (じぇばー:JEBAR)
Joint Effect of BAroclinicity and Relief.等深線と等密度線が交差することによって,傾圧流が順圧流を生み出す効果.式の概要を知りたいなら,九大磯辺さんの解説がGOOD.
JEBARを始めて提唱したのはSarkisyan and Ivanov (1971).アメリカでは,Holland and Hirshman (1972)やHolland (1973)が広めたのだろう.Meller et al. (1982)もJEBARに関係してよく引用される.Myers et al. (1996)はJEBARを導入すると,湾流の離岸が適切な位置で生ずることを示している.またMyers et al. (1996)のJEBARについての過去の論文の紹介も有益だと思う.
Holland, W. R., 1973: Baroclinic and topographic influences on the transport in western boundary currents. Geophys. Fluid Dyn., 4, 187‐210.
Holland W. R., and A. Hirschman, 1972: A numerical calculation of the circulation in the North Atlantic Ocean. J. Phys. Oceanogr., 2, 336‐354.
Mellor, G. L., C. R. Mechoso, and E. Keto, 1982: A diagnostic cal-culation
of the general circulation of the Atlantic Ocean. Deep-Sea
Res., 29, 1171‐1192.
Mertz, G., and D.G. Wright, 1992: Interpretations of the JEBAR term. J. Phys. Oceanogr., 22, 301-305.
Sarkisyan, A. S., and V. F. Ivanov, 1971: Joint effect of baroclinicity and bottom relief as an important factor in the dynamics of sea currents. Izv. Acad. Sci., USSR Atmos. Oceanic Phys. ( Engl. transl.) , 7, 173‐178.
[au=見延][dt=2002年7月26日][level=3]
JOFURO (ジェーオフロ:JOFURO)
Japanese Ocean Flux Data Sets with Use of Remote Sensing Observations という東海大が中心になって作成した,衛星から導出した,いろんな?物理量のグリッドデータ.ネーミングはご覧の通り秀逸.
JOFUROのURLは,http://dtsv.scc.u-tokai.ac.jp/だが,2003年3月現在あまり情報がない.また,データのネット上での公開はしていない.回線が細いため?
reference はKubota et al. (2002, JO).
K |
Kuroshio Position Index (KPI)
潮位差の比から,日本南岸の黒潮の流軸の位置の推定値.Kawabeさんたちが (1996)の論文で導入したようにうろ覚え.
[au=見延][dt=2001年6月23日][level=2]
L |
Lorenz Butterfly (ローレンツ・バタフライ)
1963年にローレンツが発見したカオス・システムの,アトラクターの形状を示す用語.ローレンツが調べていたのは,3つの一階常微分方程式からなるシステムである.
dX/dt=-aX+aY
dY/dt=rX-Y-XZ
dZ/dt=XY-bZ
彼がコーヒーブレークの前に打ち出していた数値をもとに再計算をすると,その前にやった計算から時間がたつにつれてずれてしまう.例えば,有効桁の5桁目をちょっと変えた二つの数値積分のYの値は,このように異なる.これは鋭敏な初期値依存性とよばれる,カオスの一つの特徴である.解の軌跡をX-Y-Z空間で描くと,奇妙なアトラクターと呼ばれる特徴が見られる.
このアトラクターを解の軌跡の時間変化で示したアニメーションをここに,また,上と同じく初期値をちょっとずらしたアニメーションをここに示す.
M |
Madden-Julian oscillation (マッデンジュリアンオシレーション)
略してMJO.熱帯対流圏で顕著に見られる30-60日の大気変動.MaddenとJulianが1971年に発見したらしい.また最近彼らがMJOのレビュー論文を書いている.MJOがエルニーニョの発生終息に重要だとういう研究が,McPhaden@PMELや高藪さん@東大CCSRによってなされている.AO(北極振動)の季節内変動の成層圏から対流圏への下方伝播にも関係しているという話もあるみたい.
Madden, R. A., and P. R. Julian, 1971: Detection of a 40-50 day oscillation in the zonal wind in the tropical Pacific. J. Atmos. Sci., 28, 702-708
Madden, R. A., and P. R. Julian, 1994: Observations of the 40-50 day tropical oscillation: A review. Mon. Wea. Rev., 112, 814-837.
[au=見延][dt=2001年6月22日][level=3]
→北極振動
[←先頭へ]Maps of Sea Level Anomaries (MSLA) Products:
衛星高度計データ,TOPEX/POSEIDONおよびERS-1/2をもとに,フランスのAVISOが最適内挿法を用いて,緯度・経度0.25度,10日ごとに格子化して作成したデータ.1992年10月〜2000年1月.
[au=見延][dt=2001年6月23日][level=3]
meridional
南北方向のという形容詞.
[au=見延][dt=2001年6月23日][level=1]
mesothermal layer (めそさーまる・れいやー)
中暖水.海の中で上下よりも暖かい水の層のこと.太平洋亜寒帯では,この中暖水が見られる.上下から冷やされるのに対抗して暖かいためには,当然ながら横(側面)から暖かい水がやってきていて,この中暖水を維持している,と考えられる.しかも,暖かい水が来るはずなので,普通は南から(厳密には中暖水がある密度面のより暖かい方向から)来るだろう.
水温を計って,中が暖かければ,南からの流れがあると推測できる,というのは結構すごい!?
→Dicho-thermal layer
[←先頭へ]Miami Isopycnal Cordinate Ocean Model (MICOM) (まいこむ)
マイアミ大学で開発された,海洋数値モデルで,鉛直座標に等密度面を利用していることに最大の特徴がある.水平は球面ね.おそらく等密度面座標の海洋モデルとしては,世界でもっとも広く使われている.他の等密度面座標モデルとしては,米国海軍研究所のものもそれなりに使われている.Oberuberのモデルも一時使われていたが,今ではMICOMに統合されている模様.日本では,坂本 天@北大・理のみが利用.
[au=見延][dt=2001年7月10日][level=3]
→Princeton Ocean Model (POM)、 Modular Ocean Model (MOM)
[←先頭へ]Modular Ocean Model (MOM) (もじゅらーおーしゃんもでる(もむ))
プリンストン大学で開発された,海洋数値モデルで,鉛直座標はレベル(等深度)である.水平座標は球面ね.おそらくbasin-scaleあるいは全球海洋モデルとしては,世界でもっとも広く使われている.Modular という名が示すとおり,多種多様なオプションを選択することができる.ソースコードは長く,分かりづらい.現在の最新version はversion 3.升本さん@東大や,諏訪君・北大・理(こっちはなんとかかんとか)が動かしている.
[au=見延][dt=2001年7月10日][level=3]
→Princeton Ocean Model (POM)、 Miami Isopycnal Cordinate Ocean Model (MICOM)
[←先頭へ]N |
NAME (ねーむ)
North America Monsoon Experiment. 北アメリカモンスーン観測実験.GEWEX-CLIVAR連合の計画である.
[←先頭へ]North のRule of Thumb (ノースのルール・オブ・サム:Norh's rule of thumb)
EOFにおいて,k番目の固有値λ_kの誤差Δλ_kは,
Δλ_k=λ_k×sqrt(2/n)
であり,固有関数(EOF)ψ_kの誤差Δψ_kは,その最も近い固有値がj番目であるとすると,
Δψ_k=ψ_j Δλ_k/(λ_j - λ_k)
となる.ここでnは時間的に独立な(厳密にはアンサンブル平均を取るのに用いた)サンプルの個数であって,気候変動では観測したデータが持つ自由度と解釈するべきである.自由度は,観測した時間サンプル数より通常小さい.
上のルールは,つまり,データが短ければ固有値の誤差は大きく,また固有値が近ければ近いほど,EOFは信頼できない,ということを述べている.
North, G. R., T. L. Bell, R. F. Cahalan, and F. J. Moeing, 1982:
Samping errors in the estimation of empirical orthogonal functions. Mon. Wea. Rev., 110, 699-706.
[au=見延][dt=2001年7月25日][level=3]
→EOF
[←先頭へ]O |
OLR
Out-going Longwave Radiation (外向き赤外放射).熱帯の大気変動の解析によく用いられる.対流性の背の高い雲が立つと,そのトップでは高度が高いために温度が低く,赤外放射が小さくなる.つまりOLRが小さいと,対流が良く発達し,また降水が多いことを意味する.熱帯以外ではどのように使われているのか,よく知らない.
[au=見延][dt=2001年4月11日][level=2]
P |
Pacific/North-American Pattern (PNA-pattern)
太平洋・北アメリカパターン,というエルニーニョに伴って生じる主用なテレコネクションパターンの一つ.Wallace and Gutzler (1981)で提案・定義された.計算式は
PNA = 0.25 * [ Z(20N,160W) - Z(45N,165W) + Z(55N,115W) - Z(30N,85W) ]
である.ここでZは500 hPa は規格化されたジオポテンシャル高度である.数値データは,JISAO@UWで提供されている.また,そこではPNAパターンの図も見ることができる.
エルニーニョの影響が合衆国を直撃するパターンなので,非常に多くの研究がなされている.ただし,エルニーニョにともなっては,PNAよりもwestern Pacific Patternの方が強いという話もある(例えば Minobe and Mantua 1999 Progress in Oceanography)
Wallace, J. M., and D. S. Gutzler, 1981: Teleconnections in the geopotential height field during the Northern Hemisphere Winter. Mon. Wea. Rev., 109, 784-812.
[au=見延][dt=2001年12月18日][level=2]
periodically extended complex EOF (PXCEOF)
[←先頭へ]
PICES
North Pacific Marine Science Orgnization を略してなぜかPICESと書く.カナダ・ヴィクトリアを本拠として,30N以北の北太平洋の海洋科学(海洋生態系・水産・海洋物理と気候・海洋化学)の研究の元気付け(encouragement)をしたりする政府間組織.水産関係ではもっと重要な役割をになっていのだろうけれど,不勉強にしてよく知らない.気候変動では,特に長期変動に興味を持っており,数十年変動やレジームシフトのシンポジウムがよく開かれる.2000年9月にはProgress in Oceanography 誌上のNorth Pacific Climate Regime Shiftsについての特集号(special issue)を刊行した.不肖見延も,生態系のS. Hareと W. Woosterとともに,物理・気候を代表して客員編集者を努めさせてもらった.
レジームシフト研究を推進したり,他分野の人とつながりを持つには悪くない場である.
なぜPICESという略称なのか長らく分からなかったが,ついに判明した.Pacific ICESで,ICESというのはよく知らないが,大西洋を研究する有名かつ歴史ある組織らしい.PICESはPacificのICESになりたかったけれど,なれなかった.でもなぜか略称だけはなってしまった.
[au=見延][dt=2002年7月25日][level=3]
Princeton Ocean Model (POM) (ぷりんすとんおーしゃんもでる(ぽむ))
プリンストン大学で開発された,海洋数値モデルで,鉛直座標にシグマ座標系を用いていることに最大の特徴がある.おそらく沿岸海洋のモデルとしては,世界でもっとも広く利用されている.また,水平座標は,一般化直交曲線座標を用いている.シグマ座標には,システマティックな誤差の累積が生じるので,その扱いには注意が必要である.そのためか,数十年の長期積分にはほとんど使われない.
ダウンロードした時には,感動した.だって,大循環モデルのfortran 77 ソースコードがたった3千行程度なんだもん(数年前のことだから今は増えているかも知れない).僕でも分かるってなものね!これに比べるとMOMなんて,とてもわけのわからんスパゲッティーコードである.しかしdecadalをやるには,一般に入手できるモデルでは,MOMか,MOM以上に難易度の高いMICOMあたりが必要である.東大や京都大モデルの方が性能はよいのかもしれなけれど...
[au=見延][dt=2001年7月10日][level=3]
→utopia、 Modular Ocean Model (MOM)、 Miami Isopycnal Cordinate Ocean Model (MICOM)
[←先頭へ]R |
re-emergency
冬季に大気の影響で生ずるSSTの変動が,夏季に季節躍層で覆い隠され,次の冬にまた表面に現われること.SST変動がある冬から次の冬に引き継がれる主用なメカニズムと考えられている.
[au=見延][dt=2001年6月22日][level=3]
Regional Oceanography (りーじょなる・おーしゃのぐらふぃー)
全球の海洋のどこがどうなっているかを概観するには,なかなか良い本であったが,惜しくも絶版.しかし,なんとpdf fileが,ここから無料ダウンロードできる.
[←先頭へ]ReynoldsのSST (レイノルズのSST)
ReynoldsのSSTと呼ばれているものは,大きくわけて2種類あるので,注意が必要だ.二つとも,このDAAC/JPLのサイトから入手することができる.一つは1981年11月〜現在までの1×1度で月もしくは週毎の最適内挿SST(NCEP Reynolds Optimally Interpolated Sea Surface Temperature Data Sets, 通称ReynoldsのOISST)であり,他の一つは2×2度月毎のEOFを用いた再構成SST(NCEP Reynolds Historical Reconstructed Sea Surface Temperature Data Set)である.
OISSTの方がよく使われている.また,月平均値,週平均値,月平均偏差の図が,ここで見ることができる.
S |
Seasonal Footprinting Mechanism (SFM) (シーゾナル・フットプリンティング・メカニズム:Seasonal Footprinting Mechanism)
冬の北太平洋の状態がどのように季節を経て赤道太平洋に影響するかを説明する一つの理論.Vimont et al. (1999; 2002a; 2002b)が一連の研究を展開.概要は,冬にwestern Pacific pattern/North Pacific Oscillation で北太平洋亜熱帯東部に水温偏差(これが足跡)を作り出す.ついで春から夏に,この亜熱帯東部の水温偏差が熱帯の風を駆動し,熱帯の風が熱帯の結合を通じて,ENSOに似た構造を作り出す.熱帯が中緯度に影響を与える大気の橋とは,影響を与える向きが逆(SFMは中緯度が熱帯に影響を与える)で,海の橋と同じ方向.なお,これらの一連の研究で中緯度の変動はランダム(stochastic)であると考えられている.
Vimont (2002b)では,観測されているエルニーニョに対するstochastic forcingの最大の寄与が,SFMであるとしているらしい.(Vimont 2002a)では,CSIROモデルの経年で25-50%, 十年スケールで75%の寄与だとしている.
Vimont, D. J., D. S. Battisti, and A. C. Hirst, 2001: Footprinting: a seasonal link between the mid-latitudes and tropics. Geophys. Res. Lett., 28, 3923-3926.
Vimont, D. J., D. S. Battisti, and A. C. Hirst, 2002a: Pacific Interannual and Interdecadal Equatorial Variability in a 1000-Yr Simulation of the CSIRO Coupled General Circulation Model, J. Climate, 15 (2) 160-178, 2002
Vimont, D. J., D. S. Battisti, and A. C. Hirst, 2002b: The seasonal footprinting mechanism in the CSIRO general circulation models. J. Climate, submitted
Singular Spectrum Analysis (SSA) (Singular Spectrum Analysis (SSA))
Ghil and Vautard (1991?) が提案した,単変量解析手法.簡単に言えば,単変量のextended EOF.ただし,通常extended EOFはラグをほんの数個しか取らないけれど,SSAでは数十個取る.ラグの個数のことをSSAではwindow widthという.SSAで解析できるのは,Window width よりも周期の小さい変動であり,window width は全データ長の1/3以下にすることが推奨されている.でも,window widthをもっと長くして,100年のデータから50-70年変動が検出できたと言っているChao et al., (2000 GRL)のような研究もある.この辺はグレーね.
SSAを多変量に拡張したものは,Multi-Channel SSA と呼ばれる.Multi-Channel SSAは実際のところextended EOFと同じになる.
SSAが有意かどうかを判定するのに,当初はsingular spectraがノイズフロアから十分離れているかどうかを見ていたが,Allen and Smith (19XXだったっけ)によってMonte-Carlo SSAが導入され,ノイズフロアから離れていてもダメな場合もあることが明らかになった.[au=見延][dt=2001年3月23日][level=3]
→complex EOF、 EOF
[←先頭へ]Singular Value Decomposition (SVD) (Singular Value Decomposition (SVD) )
二つの異(例えばSSTと海面気圧)なる多変量間の相関(もしくは回帰)を最大にするパターンを検出手法.単一変数の主用パターンを取り出すのに使われるEOFの2変数版のように使える,と思っておいてだいたいよい.
ちなみに,SVDは本来数学・行列演算の特異値分析と呼ばれる方法である.気候変動のSVDはその本質が相関行列を特異値分解することであるので,単にSVDと呼ばれるようになった.しかし気候変動分野でも行列のSVDを使いながら,上の手法とは違う手法が存在するので,多少混乱を招く呼び方である.
[au=見延][dt=2001年6月23日][level=3]
→EOF
[←先頭へ]SOLAS (そーらす?)
Surface Ocean and Lower Atmosphere Studies. 海洋表層および下層大気研究計画.主に化学っぽい炭素や物質の大気・海洋間の輸送が中心で,物理が扱う熱・水・運動量の輸送は入っていないらしい.
[←先頭へ]SPARC (すぱーく)
Stratosphere Process and Role on Climate. 成層圏の気候に及ぼす影響.
Sr/Ca比 (Sr/Ca比:Sr/Ca ratio)
SrとCaとの比でSSTが復元できる.Linsley et al., (2000, Science 290, 1145-1148) がRarotonga(21.5S, 159.5W)で利用.その紹介記事で,温度と塩分の両方から影響を受けるδ18Oよりも,温度を復元する上で問題が少ないと,Cane and Evans (2000, Science 290, 1107-1108)が述べている.
[au=見延][dt=2001年3月23日][level=3]
→δ18O
[←先頭へ]SST datasets, gridded
現在は様々なSSTデータセットが無償で提供されている.主なものは次のとおり.
USA
COADS 2×2度: NCARにリクエストすることで入手可.
Kaplan SST: Reduced optimal interpolation だったかな,で推定.LDEOから入手可.
da Silva's COADS Based SST: CD-ROMを購入.
UKMO (United Kingdom Meteorological Office)
GOASTA
MOHSST: 海上気象要素の直接観測をコンパイル.BADCにユーザー登録することで入手可.
GISST: MOHSSTから観測の無い部分も推定.BADCにユーザー登録することで入手可.
HADSST: MOHSST の後継. P. D. Jones のウェブサイトから入手可.
HADISST: GISSTの後継.P. D. Jones のウェブサイトから入手可.
Kaplan, GISST, HADISST は欠落しているデータが無い(=無理やり補間している)ので,データ解析を行なうには注意が必要.
T |
TOGA, MOGA and GOGA (とが,もが,あんどごが:TOGA, MOGA and GOGA)
全球大気数値モデルを駆動する際に,海洋の変動部分のよく利用される3通りの設定方法.
海洋の変動部分を熱帯に限るのがTOGA(Tropical Ocean and Global Atmosphere),中緯度に限るのがMOGA(Mid-latitude Ocean and Global Atmosphere),全球とするのがGOGA(Global Ocean and Global Atmosphere)である.
元々TOGAは研究計画の名前であったのを数値計算の設定に転用したことで,MOGAとGOGAが派生した.MOGAとGOGAは研究計画の名前ではない.
TOGA
Tropical Ocean and Global Atmosphere. 1990年代にこの名は,熱帯太平洋で生じるENSOとその全球への影響をさぐるプロジェクトに使われた.また,数値計算でアクティブに変動するSSTを熱帯だけに限定するセッティングをこの名をつけることもある.
[au=見延][dt=2001年6月23日][level=3]
Topex/Poseidon (トペックス・ポセイドン)
1992年8月に打ち上げられた衛星.海面高度計を備え,精度3cm(accuracy 13cm)で測定をしている.9.9156日周期で同じ起動に戻ってくる.同じ起動に戻るまで,地球を254周する.現在データは,TOPEX/Poseidon altimeter MGDR generation B として,JPLから入手できる模様.
Trans Nino Index (TNI)
Trenberth and Stepaniak (2000? JCLM)が提案した,エルニーニョの新しい指標で,Nino 1+2領域と Nino 4領域との水温偏差の差.よく使われるNino34と比べると,数ヶ月のラグがあるが,ラグの符号が1976/77のシフトをさかいに変わっている.要約と主要な図データを,ここで著者が公開している.
[au=見延][dt=2001年6月23日][level=3]
U |
utopia
3次の精度を持つ差分スキーム.東大CCSRの羽角氏がCCSRモデルに導入し,京大モデルにも波及した.ユートピアという名前はモデラー(モデルを作る人たち)の楽園を意味するのだろうか.
[au=見延][dt=2001年6月23日][level=3]
V |
ventilated thermocline (べんちれーてぃっど・サーモクライン)
通風躍層や通気躍層などと訳されるがどうもいまいち.高気圧性大気循環のもとでは,エクマンパンピングが表面で海水をエクマン層以下に押しこめる.この状況下で,海面に露出する等密度面があると,海水がもぐりこんで南に移動し,それを渦位の保存から求めることができるよという理論.
Luyten, Pedlosky and Stommel (1984)という論文で提案された.このため3人の頭文字から,ventilated thermocline のオリジナルりろんをLPS理論といったりする.
Luyten, J. R., J. Pedlosky, and H. M. Stommel, 1983: The ventilated thermocline. J. Phys. Oceanogr. 13(2), 292-309.
この理論は密度面がどこかで海面に露出する比較的浅い層の風成循環,渦位の一様化はもっと深い層の風循環を記述する.
なお上の訳語はventilateの意味である「(部屋・坑内などを)換気する,空気を流通させる」というのをなるべく生かそうとしたのだろうけれど,いまいちなのは風や気というのが大気っぽくていけないのかも.では「吹き抜け躍層」ってのはどうだろう.だめ?
[au=見延][dt=2001年6月29日][level=2]
W |
WCRP (ダブリュー・シー・アール・ピー:WCRP)
World Climate Research Programme, 世界気候研究計画の略.WCRPは,
WCRPには副計画として,CLIVAR, ACSYS/Clic, SPARC, GEWEX の4つが走っている.
WOCE
World Ocean Circulation Experiment.World Ocean Circulation Experiment. 世界海洋大循環研究計画.
全球の海洋循環を精度よく観測しようとプロジェクト.2002年に終了する.その観測線は,WOCE line と呼ばれ,時々繰り返して観測したいと多くの人が思っている.
[au=見延][dt=2001年6月23日][level=2]
Z |
zonal
東西方向の,という形容詞.
[au=見延][dt=2001年6月23日][level=1]
あ |
アルゴスブイ (あるごすぶい:argos bouy?)
表層フロートの一種.
[au=見延][dt=2001年3月31日][level=3]
インド洋ダイポール振動 (いんどようだいぽーるしんどう:Indian Dipole Oscillation (IDO))
インド洋に見られる,東西のシーソー変動.エルニーニョとは独立でありながら,相互作用すると考えられている.Saji et al., (1999 Nature)がはじめて提唱した.Sajiさんが所属する地球フロンティアのホームページにおいて,解説されている.
[au=見延][dt=2001年3月31日][level=2]
エアロゾル (えあろぞる:aerosol)
空気中をただよっている固体もしくは気体の粒.大きさは,0.01〜10-20 ミクロン.平均滞留時間は1〜数日.自然起源で存在量が多いのは風成塵(鉱物粒子)(滞留時間は4日),海塩粒子が発生量は同程度だがすぐ落ちてしまうので(滞留時間は1日),存在量では1/4くらい.人為起源では,産業活動による塵が大きいが,風成塵の1/10くらいの存在量.
人為起源のエアロゾルの増加は温暖化を弱める効果を持っている,らしい.
[au=見延][dt=2001年7月06日][level=2]
エクマン数 (えくまんすう:Ekman number)
運動方程式中の粘性項とコリオリ項の大きさの比.粘性項は水平と鉛直粘性項とがあるので,エクマン数も水平エクマン数と鉛直エクマン数がある.
エクマン数の大きさは,通常スケール解析で推定する.水平粘性係数項を,A_h Δuと仮定しよう(A_hは水平粘性係数).流速U・長さLでスケーリングすると,水平粘性項はA_h U/L^2 の大きさである.一方,コリオリ力は,f U (f はコリオリパラメーター)の大きさになる.海洋の内部領域では,エクマン数は1よりもずっと小さい.
エクマン輸送 (えくまんゆそう:Ekman transport)
エクマン流によって単位時間あたりに輸送される流体の体積.エクマン流速を鉛直積分した量でもある.エクマン流速は,エクマン螺旋と呼ばれる鉛直方向の構造を持ち,流れる方向もさまざまであるけれど,エクマン輸送は必ず風応力の方向に直行し,またその大きさは粘性係数にはよらない.この著しい性質があるために,エクマン流における粘性係数なんてよく分からないにもかかわらず,理論・数値計算がそこそこ働いてくれている.
太平洋40Nを南に横切るエクマン輸送は10Sv, 15Nを来たに横切るエクマン輸送は20Sv, あわせて30Svが亜熱帯循環に収束していることになる.これは黒潮流量の40Svと比べても小さくない.
[au=見延][dt=2001年3月23日][level=1]
エクマン流 (えくまんりゅう:Ekman current)
鉛直粘性による摩擦力とコリオリ力とがバランスして生ずる流れ.流速ベクトルの先端は,鉛直方向に螺旋を描く(もちろん深くなるにつれてベクトル長は短くなる).この螺旋は,エクマン螺旋と呼ばれている.エクマン流の向きは表面では風下を向いて右手45度になる.
京大酒井さんのエクマン螺旋実験
[au=見延][dt=2001年3月23日][level=1]
エル・ニーニョへの塩分の影響 (える・にーにょへのえんぶんのえいきょう:salinity influence on El Ninos)
工事中です.すみません.
力学高度変動が塩分と水温とが同程度に効く.Maes (1998)
低塩分のバリアレイヤー:Lukas and リンドストローム (1991)
エル・ニーニョ (える・にーにょ:El Nino)
数年に一度、ペルー沖の熱帯洋太平洋東部の海水温が異常に上昇する現象。同時に生ずる大気の変動が、南方振動である。
世界的には, NOAA/PMELの解説ページが最も充実している.(もちろん英語)
また,フラッシュで説明されるエルニーニョはなかなかの見もの.
2002年7月10日をもって,エルニーニョの発生が確認された.前回の1997/98年のエルニーニョは20世紀でも最大級(1982/83年のエルニーニョと甲乙つけがたい)だったが,今回2002年のエルニーニョは小規模なものとなる見込み.
ほぼリアルタイムでのエルニーニョの情報は,アメリカ気象局気候診断センターの今のエルニーニョで見ることができる(もち英語).
Yahooのサイエンストピックでも「エルニーニョ現象」が,多分最近作られた.ニュースと日本語解説サイトへのリンクあり.
[au=見延][dt=2002年7月25日][level=1]
→南方振動、 ENSO、 Pacific/North-American Pattern (PNA-pattern)
[←先頭へ]オブダクション (おぶだくしょん:obduction)
サブダクションの逆.つまり混合層下の水が混合層内に取り込まれること.
[au=見延][dt=2001年04月01日][level=3]
オホーツク海高密度大陸棚水 (おほーつくこうみつどたいりくだなすい:dense shelf water in the Okhotsk Sea)
オホーツク北西部の陸棚で,見られる高密度水.一意な定義があるわけではないが,深町ら(2001春海洋学会オホーツクシンポ)は密度26.7以上,現場温度0度以下と定義した.最低結氷温度(-1.8C)に達する温度となる.Kitani(1973)が提唱.海氷生成に伴うブライン排出によって形成されるのだったと記憶している.Talley(1991), Yasuda (1997)は北太平洋中層水の起源水であることを示唆.
形成量は1-2Sv(山本美千代ら2001春no.112).形成量の推定としてはCFC比を用いたものでは他にWang et al. (1998), Hydrograhpic Dta からはItoh(2000)(0.67Sv),Gladyshev et al.(2000)がある.深町ら(2001春海洋学会オホーツクシンポ)は1998/99は3月にピークをもつ10-7月の3角山,1999/00は10月と4月の二つにピークを報告.
[au=見延][dt=2001年3月31日][level=3]
オホーツク海中層水 (オホーツクかいちゅうそうすい:Okhotsk Sea Intermidiate Water)
オホーツクで多分たくさんできる水.北太平洋中層水と同じ26.8 ポテンシャル密度が中心.形成量を cfc-11,12からみ積もると,2-11 Svとなる(山本美千代ら2001春no.112).オホーツク海中層水はオホーツク海高密度陸棚水が他の水塊と混合してできたように記憶している.
[au=見延][dt=2001年04月01日][level=3]
亜寒帯フロントモード (あかんたいふろんともーど:subarctic frontal mode)
太平洋の親潮フロント40Nに沿ってSSTがまとまって変動する現象が,大気?・海洋の固有モードではないかという雰囲気で使う言葉.
Deser and Blackmon (1996 JCLI) がEOF2に出ることを示し,Nakamura et al. (1997 BAMS) が狭い領域のEOF1になり,かつ1970年代の気候レジーム・シフトについては,亜寒帯フロントの変動が亜熱帯フロントの変動に先行する(つまり亜寒帯が物理的に本質で亜熱帯は引きづられているのかもしれない)ということを示してブレイク.
他の研究でも亜寒帯フロントの変動は捉えられており,Zhang, Norris and Wallace (1998 JCLI)では Summer time EOF-1にも出ているし,Balow et al. (2001) の20S以北回転EOF-3にも出ている.
メカニズムや役割はしかしはっきりしたとはいえない.
亜熱帯反流 (あねったいはんりゅう:Subtropical Counter Current (SCC))
北太平洋西部〜中央部に見られる東向きの流れ.
137Eでは,4月から9月に見られ,22Nくらいに位置する.180では年間を通じてみられ,20-22Nに存在する.
「反流」という呼称は,この程度の緯度帯では全体として西向きの流れが生じていたと考えられていたにもかかわらず,東向きの流れがUda and Hasumuma (1969)によって,20-25Nに見出されたためである.反流は100m深での21℃〜24℃の等温線と一致し,流速は平均10cm/sである.彼らはまた,亜熱帯域に表層の混合層内に存在する前線と,亜表層に存在する前線とが存在することを述べ,亜熱帯反流は亜表層の前線に伴うものであることを示した.最近の地衡流計算では,亜熱帯反流は17-25Nのいくつかのコアからなる東向き流としてあらわれる(野中2001年春海洋).衛星観測からは,22-25Nおよび16-20Nの2本の東向き流がみられる.安定している状態は1年を限度に継続し,その位置年によって大きく変動し,毎年3−5月に位置および強度が大きく変化することが多い(辻野ら@気象庁,2001年春海洋).
メカニズム
亜熱帯反流のメカニズムは,Takeuchi (1984 JPO)と Olson (1985)は風応力と密度フラックスとの二つの要因であるとし,Kubokawa (1999 JPO)は循環系北部で形成する低渦位水の南限に位置することを,ベンチレートサーモクライン理論で説明した.Xie et al. (2001 Science)はハワイのj西のlocalな大気・海洋相互作用の結果発達する風によるとした(ただし20Nに流れが位置することになる).
位相速度 (いそうそくど:phase velocity)
波の位相が伝播する速度,c.c=ω/k,ここで波数k, 角周波数ωである.
[au=見延][dt=2001年04月13日][level=1]
移流共鳴と遅延振動子 (いりゅうきょうめいとちえんしんどうし:advection resonance & delayed oscillator)
移流共鳴と遅延振動子は,ある周期性を持つ変動をもたらす,という点では同じであるが,予測可能性には大きな違いが存在する.移流共鳴では自身がもつ時間スケールを超えては記憶が保存されない,しかし遅延振動子ではある時点での情報は減衰するものの遅延時間をこえて未来に影響を与える.従って,ある現象が移流共鳴で引き起こされている場合には,予測可能性は移流時間以内の限定されたものとなる.また移流しつつ情報が蓄積されるので,上流の情報で下流が予測できるということになる.一方,遅延振動子ではより長い予測可能時間が実現され得る.
と理解しているのだけれど,どうかな.
[au=見延][dt=2001年7月03日][level=3]
移流共鳴 (いりゅうきょうめい:advection resonance)
Saravannan and McWillams (1998 JCLM)が提唱した,移流する海洋の上で,dipoleやそれよりも節の数の大きな大気の乱数的な外力が加わると,大気の擾乱のスケールL/流速Vで決まる周期の振動が卓越するという理論.北大西洋の南北移流に対して適用したが,適用可能なのは東西に伝播するロスビー波にだって同じこと.
[au=見延][dt=2001年7月03日][level=3]
一次生産 (いちじせいさん:primary production)
海洋表層で植物プランクトンによる単位面積単位時間当たりの光合成炭素固定重量.単位はgC/m^2/yrとか.2000年ころに,1年あたり 22〜60 Gt (10^9 t).この量は化石燃料の燃焼で放出される二酸化炭素に含まれる炭素量の約3〜7倍に達している.
[←先頭へ]一般化直交曲線座標 (いっぱんかちょっこうきょくせんざひょう:general orthogonal curvilinear coordinate)
互いに直交する曲線からなる座標系.海洋では,Princeton Ocean Model が,水平座標系に採用している.また,球面座標を導出する際の議論のベースにもよく使われる.基本を勉強するなら,アルフケン第一巻・第二章(第二版)がお勧め.その基礎を踏まえた球面座標(緯度θ(赤道でゼロ,数学でよくある南極でゼロではない)・経度φ・高さz)での,基本ベクトル演算子の表示はKantha and Clayson (2000)のp.31-35にまとめられている.
ジョージアルフケン, 1970:基礎数学1 ベクトル・テンソルと行列, 講談社, pp. 310
Kantha, L. H. and C. A. Clayson, 2000: Numerical models of oceans and oceanic processes. Academic press, pp. 940.
[au=見延][dt=2001年7月17日][level=2]
鰯の種類 (いわしのしゅるい)
日本の付近の鰯は,真鰯・潤目鰯・片口鰯の三種類.
真鰯(マイワシ, Sardine):体側中央に黒点が7つある。最大20cm超。大きいのを大羽、中くらいのを中羽という。
潤目鰯(ウルメイワシ,英訳不明):真鰯より大きく30cmに達する。目に膜があって目が潤んで見える。脂が少なく干物に適する。
片口鰯(カタクチイワシ,anchovy):最大15cm。口が大きく上アゴが極端に前に突き出ているから片口の名がついている。背黒(せぐろ)鰯とも呼ばれるアンチョビーもこの仲間。
1920年代・1940年代・1970年代の気候レジーム・シフトに伴って,マイワシの資源量はおおきく,増加・減少・増加した.その後は1990年代から減少の一途.1990年代からの減少には,1988/89年のminor気候レジーム・シフト,さらに1998/99年のレジームシフトの可能性のある変化が寄与しているのかもしれない.
渦位の一様化 (うずいのいちようか:homogenization of potential vorticity)
表面に露出する密度面がない比較的深い層でも,表面風の効果が循環を作ることができるというお話.Rhines and Yong (1982)によって提案された.渦位が一様になっているところで循環ができるということで,この名がついている.
Ventilated thermocline理論はもう少し浅いとこを説明する.
[au=見延][dt=2001年6月29日][level=2]
→WOCE
[←先頭へ]栄養塩 (えいようえん:nutrients)
リン・窒素・珪素・カリウムなどの総称.生物に必要な元素のうち,炭素・水・酸素と微量元素以外.表面では,栄養塩が使い尽くされている場合でも,100mくらい深いところに行くと結構ある.このために,100mくらい深いところの水が表面の水と交換しやすい,亜寒帯や赤道では,栄養塩の供給が盛んで生物生産が多い.
[au=見延][dt=2001年7月06日][level=1]
→鉄
[←先頭へ]衛星による海上風観測 (えいせいによるかいじょうふうかんそく:satellite observation for surface winds)
SSM/Iからはじまったのではと思うのだけれど,衛星によって海上風速の2成分が推定できる.
SSM/Iは1987年7月〜1996年12月, NSCAT(ADEOSに搭載)が1996年9月〜1997年6月29日,SeaWindsが1999年7月19日〜現在までとなっている.もっと詳しい説明と,ダウンロードやCD-ROM注文のやり方が,英語だけれどNASA Jet Polution Lab. (JPL) のPhysical Oceanography Distributed Active Archive Center (PO.DAAC)にあります.
衛星高度計 (えいせいこうどけい:sattelite altimetry)
衛星から海洋表面の高さを測る測定機器.衛星と測定機が新しくなる毎に性能が向上している.
Geosat: 1985年3月〜1990年1月
ERS-1: 1991-1996
Topex/Poseidon: 1992年9月〜現在(2001年9月)
ERS-2: 1995-
衛星地球観測 (えいせいちきゅうかんそく)
意味は読んだまま.今日非常に多くの衛星観測データが得られており,我々の地球についての知識を拡大するのにすばらしい効果を発揮している.どれだけ多くの観測がなされているかは,例えば西村屋の一覧を見よう.
[←先頭へ]円石藻 (えんせきそう:coccolithphores)
植物プランクトンの一種で,炭酸カルシウムでできた円盤やリング状の円石(ココリス)を数個から多数(数十個?)つけている.ココリスの板やリングは炭酸カルシウムの殻で,それを作る際に海洋中から大気中に二酸化炭素を放出する可能性が指摘されており,円石藻の増殖は地球温暖化を加速するかもしれない.
円石藻のブルームは衛星から白い色として検出される.1997年にベーリング海でココリスの白がはじめて見つかった.SeaWifs衛星で検出されたcoccolithphoresのイメージがhttp://orbit-net.nesdis.noaa.gov/orad2/doc/ehux_www.htmで見れる.このココリスブルームの原因がなにか,地球温暖化と関係するのか,など現在精力的な研究がなされている.
なお,円石藻のブルームつまりココリソファーレ・ブルームを簡単にココリス・ブルームということがある.同様に口頭では円石藻とココリスとを同じ意味で使うことも多い.
鉛直モード展開に必要な近似 (えんちょくもーどてんかいにひつようなきんじ)
線形連続成層モデルを固有値問題に帰着させるには,鍋蓋近似と,流体の厚さ一定(海底地形は無視),さらに表面での密度一定という近似が必要である.専門的になるが,表面の密度一定の近似は実際の流体では成り立たないので,これを取りこもうとして,Rothernstein あたりが1980年代前半にいろいろがんばっていた.しかし大きな潮流にはならず,ほぼ忘れ去られている.
[au=見延][dt=2001年04月04日][level=3]
鉛直モード展開 (えんちょくもーどてんかい:vertical mode decomposition)
理論的には,線形連続成層モデルを鉛直方向の固有値・固有関数問題として扱うと,一つの順圧解(順圧モード)と無数の傾圧解(傾圧モード)とが得られることを指す.この固有値・固有関数問題は,スツルム・リュービル問題を構成する.観測的には,ある観測された変動を,順圧モード(無視する場合もある)といくつかの傾圧モードに分解して議論することを言う.[au=見延][dt=2001年04月04日][level=1]
→鉛直モード展開に必要な近似、 スツルム・リュービル問題、 傾圧モード、 順圧モード、 1層モデル、 2層モデル
[←先頭へ]鉛直拡散係数の値 (えんちょくかくさんけいすうのあたい:values of vertical diffusivity)
深層に大きな値を持つ.Ledwell et al (2000 Nature) のブラジル海盆での直接観測によると,一般には0.1(cm^2/s),でこぼこの地形の上で20-30(cm^2/s).14日の潮汐変動に伴う変化がみられることから,原因は潮汐である. この局所的に強いdiffusivityが,大循環を論じる場合には,明らかにはされていないメカニズムによって水平方向に平均化されて働くと考えられる.たとえば,Nakano & Suginohara (2001) では北太平洋の1000-4000 m では,1 cm^2/s 程度の値を採用している.Munk & Wunsch (1998, Deep-Sea Res.)では,深層水形成量を25-30Svから見積もって100-4000mで 1cm^2/s, Webb and Suginohara (2001, Nature) では,Topex Poseidon から見積もって,潮汐は0.8 TW, 風は0.3TW として,0.5 cm^2/sと半分くらいになる.両者に矛盾があるように見えるが,NADWの半分くらいは杉ノ原さんの言うところのwind-enhancedとrecycleを考慮すると,pureな深層水形成量は半分とみなして,エネルギーと形成量の見積もりが矛盾無くなる.さらにdiffusivityの値がlocarizeするとして,良いスキームの水平1度の高解像度にすると,北太平洋の平均で1cm^2/sという値でも矛盾しない.
[au=見延][dt=2001年3月31日][level=3]
鉛直拡散係数 (えんちょくかくさんけいすう:vertical diffusivity)
鉛直方向の拡散係数.
[au=見延][dt=2001年3月31日][level=1]
海の橋 (うみのはし:oceanic bridge)
大気の橋に対抗して,Schneider et al., (1999 GRL)がGu and Philander (1997 Science) が提唱した中緯度から熱帯への海洋中を通じた伝播を,こう呼んだ.ちらほら使われているような気がするが,大気の橋ほどメジャーではない.[au=見延][dt=2001年3月23日][level=3]
→大気の橋
[←先頭へ]親潮 (おやしお:Oyashio)
北太平洋の南向きに流れる西岸境界流。黒潮の流量の1/5程度とされていたが,最近の研究では親潮には地衡流では十分に評価てきない順圧成分が大きく,実際にはそれよりも大分大きいらしい.
[au=見延][dt=2001年3月23日][level=1]
→黒潮
[←先頭へ]赤潮 (あかしお:red tides)
海水中の植物プランクトンなどの異常増殖が,海の色を赤褐色や茶褐色に変える現象.2001年8月28日のNASA-JPLの発表では,サハラ砂漠のdustに含まれる鉄が,はるかフロリダの西の赤潮をトリガーするらしい.
[au=見延][dt=2001年10月17日][level=2]
か |
ケルビン波 (けるびんは:Kelvin wave)
沿岸ケルビンと赤道ケルビンの総称.[au=見延][dt=2001年3月23日][level=1]
→重力波
[←先頭へ]ココリス (ここりす:coccolith)
→円石藻
→円石藻
[←先頭へ]コリオリパラメータ (こりおりぱらめーた:Coriolis parameter)
地球が回転していることによって,運動方程式に現われるパラメータ.地球の回転角速度をΩ,緯度をθとして,コリオリパラメータfは
f=2Ω sin(θ)=1.45x10^-4 sin(theta)
である.90Nで最大2Ω,赤道ではゼロ.
コリオリパラメータ
(sec -1)
45N 1.03x10^-4
40N 0.93x10^-4
35N 0.83x10^-4
30N 0.73x10^-4
結局中緯度では,コリオリパラメータは一声1x10^-4 sec^-1.
[au=見延][dt=2001年3月23日][level=1]
コンベヤーベルト (こんべやーべると:conveyor belt )
深層水が形成される北大西洋→南極周極流→北太平洋→中層に湧昇→
循環時間は1500年.循環する流量は20-30Sv.
[au=見延][dt=2001年3月31日][level=2]
→熱塩循環
[←先頭へ]黄砂 (こうさ:yellow sand)
中国の砂漠地帯の砂が巻き上げられ,離れた地点に到達する現象.ゴビ砂漠から出て日本まで2・3日,ハワイまで1週間.北大西洋まで到達するものもある(TOMSの画像).アラスカの氷にも砂があり,黄砂は主に春に出る.雪が少ないのも利くらしい.なお,北朝鮮(極東ロシア南部?)では砂漠化が進み,最近黄砂がでるようになった.砂漠化が進んでいることが分かるのは,植生の衛星データから.普通は,東に進むが2001年は北東に(利尻に向いて)行った.
Asian dust とも呼ばれる.
[au=見延][dt=2001年7月06日][level=3]
回帰線水 (かいきせんすい:North Pacific Tropical Water)
亜表層の塩分極大で特徴付けられる水塊.形成域は20-30N, 140E-140W.回帰線で形成されるので和訳がこうなっている.密度は23-25sigma-theta. Suga et al. (2000 Prog. in Oceanogr. )が気候値と数十年変動の解析を行なった.
海氷の運動 (かいひょうのうんどう:motion of sea-ice)
海氷の運動は,だいたい風に支配されており,荒っぽく言って,風速の2%で,風向きから北半球では45度右向きに流れる.
Thorndike, A. S. and R. Colony (1982)は,北極のブイのデータから,地衡風測の8度右向きで,0.8%の速度で,7割がた説明されるとした.一方Reynolds et al. (1985)は,ベーリング海のブイのデータから,海上3mの風速の,右向き30度で,4%の速度であるとした.
なお,海上風は地衡風の左向き10-20度になると考えられている.海上風と地衡風が異なるのは,海上では摩擦が効くために,高気圧側から低気圧側に押し流される成分も寄与するためである.
Thorndike, A. S. and R. Colony, 1982: Sea Ice motion in response to geostrophic winds. J. Geophys. Res., 87, 5845-5852.
Reynolds,M., C. H.Pease, and J. E.Overland: Ice drift and regional meteorology in the souhern Bering Sea: Results from MIZEX west. J. Geophs. Res., 90 (C6), 11967-11981.
[au=見延][dt=2001年10月17日][level=3]
海氷 (かいひょう:sea ice)
海の水が凍ってできた氷.川の水が凍ったのは海氷ではないし,陸上の氷ができる氷山も海氷ではない,そうだ.
→定着氷
[←先頭へ]海氷域 (かいひょういき:sea ice extent)
海氷のある海域で,気象庁では海氷密接度1/10以上の領域と定義している.
[←先頭へ]海氷密接度 (かいひょうみっせつど:sea-ice concentration)
海氷が占める面積の割合.密接度が100%なら,全面結氷.密接度が0%なら海氷はない.
[←先頭へ]確率共鳴 (かくりつきょうめい:stochastic resonance)
ノイズが加えられることによって,特定の周期成分などが出力される現象.元々は,Benzi et al. (1981; 1982)で気候変動を説明するのに提案され,その後b生物や工学など幅広い分野に影響を与えた.最近のレビュー論文にはGammaitoni et al. (1998)がある.
mathworld.wolfram.com によれば,確率共鳴とは「非線形システムにおいて,ノイズが加えられない場合には検出不可能なシグナルが,ノイズが加えられノイズと決定論的に定まるシグナルとして検出可能となること」である.この場合は通常,2つ以上の安定状態がシステムに存在し,その状態間の遷移がシステムに内在する変動だけでは生じ得ないが,ノイズの助けを借りることで遷移が発生することができる.
なお,線形システムの弱い減衰モードがノイズの助けを借りて弱い成長モードになるのは, 上の定義に照らせばstochastic resonanceとは言わないことに注意しよう.
Benzi, R.; Sutera, A.; and Vulpiani, A. "The Mechanism of Stochastic Resonance." J. Phys. A 14, L453-L457, 1981.
Benzi, R., G. Parisi, A. Sutera and A. Vulpiani, 1982: Stochastic resonance in climate change. Tellus, 34, 10-16.
Gammaitoni, L., P. Hanggi, P. Jung, and F. Marchesoni, 1998: Stochastic resonance. Rev. Mod. Phys. 70, 223-288.
基礎生産 (きそせいさん)
一次生産に同じ.
[←先頭へ]気候レジームシフト (きこうれじーむしふと:climatic regime shift)
気候がある状態(regime)から他の状態に,おのおのの状態が持続する時間よりも短い時間で遷移すること.別な表現では,気候がある比較的安定した状態から,他の安定した状態に遷移するとも言う.また遷移が短い時間で生ずるので,急峻な遷移とも表現される.気候変動にレジームシフトという言葉が持ちこまれたのは,Nitta and Yamada (1989 JMSJ)が示した1976/77を境として北太平洋の気候状態の大きな変化を,Trenberth (1990 BAMS)がレジームシフトとして紹介しさらに追加の解析をしてからであろう.この変化は当初地球温暖化の現われかとも考えられたが,Minobe (1997 GRL) がついでMantua et al. (1997 BAMS)が,同様の変動が1920年代・1940年代にも生じたことを示し,現在では本質的には自然の気候変動現象であると考えられている.
1920, 1940, 1970年代に急激に気候状態が変化した理由を,Minobe (1999 GRL; 2000 PiO)は20年変動と50年変動とが同じに符号を変えたためであると主張した.この主張のエッセンスは,月刊海洋でも紹介している.
なお最近では例えばChao et al. (2000 GRL)は20年変動の符号反転をレジームシフトであると述べているが,彼らの主張は上のレジームシフトの定義とは矛盾することに注意しなくてはならない.単なる長期振動については,たとえば南大西洋の40年変動(Venegas and Mysak 1998? JCLM)にしろ,北大西洋振動の10年変動にしろ,レジームシフトと表現されることは無い.太平洋の長期変動は他ではみられない安定した状態間の急峻な遷移という特徴があるために,レジームシフトという特別な名称を冠されたと考えられる.とは言え,魅力的な用語が濫用されるのは世の定め,Minobe (2000 PiO)はそこで,1920年代・40年代・70年代のレジームシフトを major regime shifts,他のレジームシフトをminor regime shifts と呼ぶことを提案した.まあこのへんはいろいろ議論があるところでしょ.
[au=見延][dt=2001年6月23日][level=3]
気候変動指数 (きこうへんどうしすう:climate index)
気候変動を表す,時系列のこと.南方振動指数や北大西洋振動指数など,さまざまなものがある.たとえば,ここにいくつかの気候変動指数へのリンクがある.
[←先頭へ]季節内 (きせつない:intraseasonal)
数十日から一年以内の時間スケール。ただし、季節変化に伴う半年周期変動等は通常除く。[au=見延][dt=2001年3月23日][level=1]
[←先頭へ]極渦 (きょくうず:polar vortex)
極付近の対流圏中・上層に存在する低気圧性の渦.
[←先頭へ]群速度 (ぐんそくど:group velocity)
波がエネルギーを伝達する速度.つまり大きな振幅が,一群の波達から,別の一群の波達に伝えられる速度であるので,この名前があるのであろう.表現を変えると,個々の波を包む,包絡線が伝播する速度でもある.
群速度は一般にc_gで表す.c_g=∂ω/∂k,ここで波数k, 角周波数ωである.
[au=見延][dt=2001年04月13日][level=1]
傾圧モード (けいあつもーど:baroclinic mode)
流速の上下の平均成分からのずれを記述する運動の形態.順圧モードと共に,線形連続成層モデルを鉛直方向の固有値・固有関数問題(スツルムリュービル問題)として扱うと,導き出される.順圧モードは一つしかないが,傾圧モードは付加番無限個得られる.なお一般に,線形固有値・固有関数問題の解として得られる運動なり変動なりを,モードと呼ぶ.順圧モードおよび各々の傾圧モードは,浅水方程式系に従うので,1層流体の運動を記述する浅水方程式系は,実は連続成層の運動を理解する上でも本質的に重要である.
[au=見延][dt=2001年04月04日][level=1]
→鉛直モード展開、 浅水方程式、 順圧モード、 黒潮流量の長期変動
[←先頭へ]珪藻 (けいそう:diatom)
珪藻って何だろう.
[←先頭へ]経年変動 (けいねんへんどう:interannual variability)
経年の。2〜8年程度の時間スケールを持つ変動.[au=見延][dt=2001年3月23日][level=1]
→十年変動
[←先頭へ]黒潮 (くろしお:Kuroshio)
たぶん20Nくらいから、日本南岸までをいう。銚子で離岸し、東に流れる海流は黒潮続流(Kuroshio extention)と呼ばれる。平均の流量は40Sv程度.
[au=見延][dt=2001年3月23日][level=1]
黒潮観測プログラム (くろしおかんそくぷろぐらむ:Kuroshio observation program (KOP))
南西諸島の東西の海域
主たる観測手段は,inverted echo sounder
phase I (2000-2004), phase II (2005-2009)
[au=見延][dt=2001年3月23日][level=3]
黒潮蛇行のタイプ (くろしおだいだこうのたいぷ:types of Kuroshio large meander)
日本南岸の黒潮の流路いくつかのタイプが提案されている.最も大きな蛇行はA型,ほかB,C,D型がある.N型は非蛇行ね.
水路部の黒潮蛇行のタイプの解説
[au=見延][dt=2001年3月23日][level=2]
黒潮大蛇行と九州沖小蛇行 (くろしおだいだこうときゅうしゅうおきしょうだこう:Kuroshio large meander and small meander off Kyushu)
九州沖に小蛇行が生じ,その小蛇行が東進して大蛇行となる例が非常に多く観測されている.1990年代前半以前のすべての大蛇行の発生はこのメカニズムによっていた.
[au=見延][dt=2001年3月23日][level=3]
黒潮大蛇行 (くろしおだいだこう:Kuroshio large meander)
黒潮が日本南岸で沿岸から大きく離れる経路を取る現象.
水路部の黒潮蛇行の解説ページ
[au=見延][dt=2001年3月23日][level=1]
黒潮流軸 (くろしおりゅうじく:Kuroshio axis)
黒潮の流れの水平方向での中心。100 m xxC の等温線が良い指標である()。[au=見延][dt=2001年3月23日][level=2]
→黒潮
[←先頭へ]黒潮流量の長期変動 (くろしおりゅうりょうのちょうきへんどう)
黒潮の流量の長期変動成分は11Svに達し,アリューシャン低気圧に4〜5年遅れて変化する(アリューシャン低気圧が強いと、4〜5年後に黒潮流量が増加する)(Deser et. al. 1999 JCLM).この4〜5年の遅れは,海洋を伝播する傾圧ロスビー波によって生じていると考えられている.
[au=見延][dt=2001年3月23日][level=3]
混合層 (こんごうそう:mixed layer)
海の表面からある深度までよく上下に混合された層.混合は,風が混ぜる効果と,冷却の効果の二つ.
混合層深度を推定するには,以下の3つがよく利用される.
1) 表面温度から1℃低い水温の深さ.
2) 表面ポテンシャル密度から1.25kg/m^3ポテンシャル密度が低い深さ.
3) ∂θ/∂zが最大になる深度.
[au=見延][dt=2001年3月23日][level=2]
風応力 (かぜおうりょく:wind stress)
海洋上を吹く風が,海洋に伝える応力.風の向きの方向になる.簡単には次のバルク式
tau_x=C_d w_x |w|
tau_y=C_d w_y |w|
ここで,C_dはdrag coefficientと呼ばれる係数.|w|は風速の絶対値,w_x (w_y)は風速,tau_x (tau_y)は風応力.
[au=見延][dt=2001年3月31日][level=1]
北赤道海流 (きたせきどうかいりゅう:north equatorial crrent)
[←先頭へ]
北太平洋亜熱帯モード水 (きたたいへいようあねったいもーどすい:North Pacific Sub-Tropical Mode Water (NPSTMW))
北太平洋の表面で最も多量に形成される水塊.ポテンシャル密度は25.1-25.4,温度がほぼ18℃であることから,18℃水とも言われる.
[au=見延][dt=2001年3月31日][level=2]
北太平洋深層水 (きたたいへいようしんそうすい:North Pacific Deep Water (NPDW))
北太平洋の深層の水[au=見延][dt=2001年3月23日][level=2]
[←先頭へ]北太平洋中央モード水 (きたたいへいようちゅうおうもーどすい:North Pacific Central Mode Water )
太平洋中央部で多量に形成される,26.1-26.2のポテンシャル密度を持つ水塊.
形成域は(35-40, 170E-155W) (青木ら@東北大, 2001年春海洋学会.
亜熱帯モード水と並んで,北太平洋の海洋表面で形成される二つの主要な水塊.
亜熱帯モード水よりも重い.
北太平洋の数十年変動と関連し,大きく変化している(Deser et al., 1996 JPO).subduction path way を通って,その影響が18Nの太平洋西岸(フィリピンくらい)付近まで,追跡できることが知られている(Tourre et al., 1999 JPO).
以下の2本の論文が提唱.
Nakamura, H., 1996: A Pycnostad on the Bottom of the Ventilated
Portion in the Central Subtropical North Pacific:
Its Distribution and Formation. J. Oceanogr., 52, 171-188
著者が書いた解説がここで読めます.
Thermostad distribution in the North Pacific subtropical gyre: the
central mode water and the subtropical mode water
by Suga, T., Y. Takei, and K. Hanawa
(Journal of Physical Oceanography, 1997, Vol.27 , pp 140-152 )
[au=見延][dt=2001年3月31日][level=3]
北太平洋中層水 (きたたいへいようちゅうそうすい:North Pacific Intermidiate Water (NPIW))
ポテンシャル密度26.8付近の,鉛直方向の塩分極小で特徴づけられる水。北太平洋に広く広がっている.塩分極小が見られるということは,比較的大量の塩分が小さい水が新たに作られなくてはならない.しかし,このポテンシャル密度の水は北太平洋の表面では見られないために,極小を構成する低塩分の源はオホーツクにあると考えられている。この水は数年前から大きな注目を集めているが、たとえば気候変動に重要な役割を担っているかどうかなどは、まだよくわかっていない.[au=見延][dt=2001年3月23日][level=2]
[←先頭へ]北太平洋中層水流量 (きたたいへいようちゅうそうすい流量)
Adcp基準の地衡流量
26.6-27.2:親潮水5~6Sv., 黒潮水7~8 Sv
residence timeは20年
26.6-27.0:親潮水3~4Sv., 黒潮水4~5 Sv
[au=見延][dt=2001年3月31日][level=3]
北大西洋振動 (きたたいせいようしんどう:North Atlantic Oscillation)
アゾレス高気圧とグリーンランド低気圧における気圧偏差が,シーソーのように互いに逆符号で変動する現象.David LDEOのNAO解説ページがここ.Stephenson (仏)の解説ページがここ.どっちが充実しているかはともかく,マンガのかっこ良さならLDEO.
[au=見延][dt=2001年3月23日][level=2]
北大西洋振動指数 (きたたいせいようしんどうしすう:North Atlantic Oscillation Index (NAOI))
北大西洋振動の偏差を表す指数.NAO index の作成方法にはいくつかの方法がある.
一つは,ポルトガルのリスボン(Lisbon, Portugal) と,アイスランドのレイキャビク(Stykkisholmur/Reykjavik, Iceland )との気圧差で,NCARのJim Hurrell はこの方法で,冬季のNAO Indexを,ここで1864年以降提供している.
ただしこの方法は冬季以外の季節には十分にNAOを捕らえきれていないということで,他の季節については,リスボンに代えてPonta Delgada, Azoresが推奨されている.上記URLでHurrell自身この方法でのNAOも(1894以降)提供している.また,同じ方法で, P. D. Jonesはここで1865年以降のNAO Indexを提供している.
[au=見延][dt=2001年4月25日][level=2]
さ |
サブダクション (さぶだくしょん:subduction)
鉛直パンピングと傾いた混合層を横切るlateral advection の二つの効果がある.
Huang & Qiu (1994)と Qiu & Huang (1995) は,Stemmel のmixed layer daemonの考え方を用いて,晩冬の混合層の底を横切る年平均フラックスからsubduction 率を計算することができる.subductionの逆はobduction.
[au=見延][dt=2001年04月01日][level=3]
スウェルドラップ・バランス (すうぇるどらっぷ・ばらんす:Sverdrup balance)
βV=curl (tau/rho)
という海洋内部領域で成り立つバランス.ここでVは鉛直方向に積分した南北流量,他は標準記法による.つまり南北方向の流速は,風のカールで決まる.
[au=見延][dt=2002年9月1日][level=1]
スウェルドラップの関係式 (すうぇるどらっぷのかんけいしき:Sverdrup relation)
βv = f ∂w/∂z
という海洋内部領域の混合層の下で成立する関係.混合層の中では,この他に風応力の効果を考慮する必要がある.
ここで,vは南北流速,wは鉛直流速,fはコリオリパラメータ,βはfの南北微分,zは鉛直座標で上向き正.
[au=見延][dt=2002年9月1日][level=1]
スウェルドラップ (すうぇるどらっぷ:Sverdrup)
流量の単位.Sv と略記する.1 Sv = 10^6 m^3 sec^-1. [au=見延][dt=2001年3月23日][level=2]
[←先頭へ]スツルム・リュービル問題 (すつるむりゅーびるもんだい:Sturm-Liouville problem)
2階常微分方程式の固有値問題で最も基本的な問題.2階自己随伴常微分方程式が,自己随伴な境界条件を伴われる場合に,この問題に帰着される.式で示せば,
微分方程式: d(p(x) u(x)_x)/dx - q(x) u (x) + λr(x) u(x) = 0
境界条件: u=0 at x=a & x=b とか u_x=0 at x=a & x=b など.
この問題の解は,固有関数u_n(x)の和で表される.固有関数u_nに対応して,λ_nが存在する.
スツルム・リュービル問題は,多くの性質が知られている.
・固有値,固有関数ともに実数.
・二つの異なる固有関数u_n(x), u_m(x)は重み関数r(x)について直行する.
・固有値は可算無限個存在し,それらの固有値には最小値が存在する.
・固有値λ_nに対応する固有関数u_n(x)は内部領域(a
・固有関数系{u1, u2, ...}は重みr(x)に関して完全系をなす.
詳しくは例えば,及川 正行著「偏微分方程式」(岩波・理工系の基礎数学4)のp. 197あたりに書いてある.
なお, 境界の位置が∞の場合または境界で2階の微分係数がゼロの場合は,特異境界値問題と呼ばれる.
大気海洋の世界では,鉛直モード展開はスツルム・リュービル問題に他ならない.
スツルム・リュービル問題ではない固有値問題ももちろん存在する.特に重要なのは,固有値・固有関数が複素数になる,不安定問題であろう.傾圧不安定とか大気・海洋結合不安定問題ね.
[au=見延][dt=2001年04月04日][level=1]
ソルト・フィンガー (そると・ふぃんがー:salt finger)
海水上下混合の一つの形態で,温度と塩分の拡散係数が異なることで生ずる.
上に高塩・高温,下に低塩・低温の水があるとしよう.温度は塩分よりも早く混ざるので,上が中温・高塩(よって高密度),下が中温・低塩(低密度)となる.上の密度が下より重いので,上下の混合が生ずる.ただしこの混合は,指が伸びるように上の水が下に,下の水が上に貫入するので,ソルト・フィンガーと呼ばれる.
親潮・黒潮混乱水域では,こういうソルト・フィンガーが亜熱帯の水と亜寒帯の水の混合と,その結果生ずる北太平洋中層水に重要な役割を果たしていると考えられている.
最適内挿法 (さいてきないそうほう:optimal interpolation)
[←先頭へ]
時間のロスビー数 (じかんのろすびーすう:temporal Rossby number)
回転流体の運動方程式において,時間変化項とコリオリ項との大きさの比.しばしばRo_Tで表される.
Ro_T=1/(ΩT)である.ここで,Tは現象の時間スケール,Ωはコリオリパラメータの大きさである.
Ro_Tが1よりも小さいなら,荒っぽく言えば現象の時間スケールが1日よりも大きいなら,時間変化項はコリオリ項よりも小さい.
[au=見延][dt=2001年4月11日][level=1]
宗谷暖流 (そうやだんりゅう:Soya Warm Current)
宗谷海峡からオホーツクに流入し,北海道沿岸を南東向きに流れる高温・高塩の水.
宗谷暖流は,夏に0.4-0.5m/sの最大に達し,12-1月は0-0.25m/s.
中層まで達する密度の重い宗谷暖流は4−6月のみ.
[au=見延][dt=2001年3月31日][level=2]
十年変動 (じゅうねんへんどう:decadal variability)
狭義には10年程度、広義には10〜100の時間スケールを持つ変動.[au=見延][dt=2001年3月23日][level=2]
→20年変動、 経年変動、 準十年変動、 数十年変動、 二十年変動
[←先頭へ]重力波と一般流との相互作用 (じゅうりょうはといっぱんりゅうとのそうごさよう:interactions between mean currents and gravity waves)
重力波は,一般流れと相互作用して,一般流を加速させたりすることがある.赤道成層圏大気の準二年振動の主要なメカニズムは,この重力波と一般流との相互作用である.海洋の赤道深層jetsも,重力波で涵養されているのでは,という話もある.
[au=見延][dt=2001年7月10日][level=3]
重力波 (じゅうりょくは:gravity waves)
重力を主たる復元力として生ずる波.狭くは非回転流体の重力波を意味する.津波はこの非回転と近似して大丈夫な,重力波である.広くは,慣性重力波も含まれる.また,ケルビン波は,岸にそって進む重力波とも言える.
[au=見延][dt=2001年7月10日][level=1]
準2年変動 (じゅん2ねんへんどう:quasi-biennual oscillation)
大体2年程度(1.5から3年)の周期・タイムスケールを持つ変動.
[au=見延][dt=2001年3月31日][level=1]
準十年変動 (じゅんじゅうねんへんどう:quasi-decadal variation)
8年〜13年程度の変動を表す言葉。十年変動という単語が広くは、十年〜百年の変動を意味するので、丁度十年程度であることを明示したいときに使われる。[au=見延][dt=2001年3月23日][level=2]
[←先頭へ]準地衡流 (じゅんちこうりゅう:quasi-geostrophic)
中緯度β面近似を用いた運動方程式において,地衡流バランス(浅水方程式で言えば,f0 u=-g∂h/∂y, -f0 v=-g∂h/∂x)が主用なバランスであると仮定して導きだされる,方程式(系).浅水方程式系に対してならば,流線関数あるいは表面変位(1.5層モデルなら層厚)についての単一方程式で表される.
準地衡流では層厚の変化が,オーダーε以下でなくてはいけないと制約がある.しかし,複数の層を持つモデルの場合は,層厚の変化が大きい場合があって,その場合は準地衡流の利用は適さない.
力学的には,重力が復元力となる波動は取り除かれる.例えばケルビン波は存在できない.
赤道域では準地衡流モデルは適用できない.
ちなみに,「準地衡流」などと言うと難しく感ぜらるので,「だいたい地衡流」と覚えておくことをお勧めする.簡単な気がするでしょ.
[au=見延][dt=2001年04月12日][level=1]
→地衡流
[←先頭へ]順圧モード (じゅんあつもーど:barotropic mode)
上から下まで同じ水平流速を持つ,浅水流体の運動.線形連続成層モデルを鉛直方向の固有値・固有関数問題として扱うと,一つの順圧解と無数の傾圧解とが得られる.この順圧解で説明できる運動を順圧モードと呼ぶ.なお一般に,線形固有値・固有関数問題の解として得られる運動なり変動なりを,モードと呼ぶ.順圧モードおよび各々の傾圧モードは,浅水方程式系に従うので,1層流体の運動を記述する浅水方程式系は,実は連続成層の運動を理解する上でも本質的に重要である.
[au=見延][dt=2001年04月04日][level=1]
数十年変動 (すうじゅうねんへんどう:interdecadal variability, multidecadal variability)
20年から80年程度の時間スケールを持つことを、interdecadal と形容する。30年から80年程度の時間スケールを持つことを、multi-decadalと形容する。日本語では両者の区別は無い。multi-decadal を用いるのは、20年変動と区別した場合が多い。[au=見延][dt=2001年3月23日][level=2]
→十年変動
[←先頭へ]成層圏QBO (せいそうけんQBO:stratospheric quasi-biennual oscillation)
成層圏の赤道上で,大体1年毎に東西風の方向が変わる現象.1年毎に符号が変わるので,大体2年で1周期となり,準二年変動(QBO)と呼ばれる.
[au=見延][dt=2001年6月23日][level=2]
西岸境界層 (せいがんきょうかいそう:western boundary layer)
だいたい地衡流が成り立つ内部領域と異なり,圧力傾度力以外の力が重要である,海の西岸に接してできる層.この層に流れる流れが西岸境界流である.
海底摩擦が支配的なStommel layer, 水平摩擦が支配的なMunk layer, 非線形項が支配的な慣性境界層の3つあり得る.実際にはこれらの混合であり,さらにこのような単純なモデルで考えられていない地形の効果も重要である.
[au=見延][dt=2001年4月11日][level=1]
西岸境界流 (せいがんきょうかいりゅう:western boundary current)
太洋の西岸付近に生ずる強い海流。太洋の内部領域では、スウェルドラップバランスが成り立つので、大気の高気圧(低気圧)循環の下では海洋の水は南(北)に運ばれる。この内部領域の流れを相殺し質量を保存するために、西岸境界層の中で強い流れが北(南)に生ずる。境界層が西にできるのは、ロスビー波が西に情報を伝えるためだ。
黒潮・親潮は共に、北太平洋の西岸強化移流だ。また湾流は黒潮同様北に向かう北大西洋の西岸境界流だ。[au=見延][dt=2001年3月23日][level=1]
赤色ノイズ (せきしょくのいず:red noise)
次の時間ステップの値が,現在の時間ステップの値にラグ1相関係数をかけたものと,白色ノイズとの和で表されるノイズモデル.また,このノイズモデルによって得られるノイズ自体を意味することもある.ノイズモデルを式で示せば,
x(n+1)=r x(n) + e(n)
となる.ここで,nは時間ステップ数.x(n)はn番目の時間ステップでの,変数xの値.e(n)は白色ノイズ, rはラグ1相関係数である.
赤色ノイズ時系列の理論スペクトルは,周波数が増加するにしたがってスペクトルが単調に減少する.つまり低周波数のスペクトルが強く,さらに可視光のスペクトルの低周波数成分が赤色であることから,この赤色ノイズとの名前が付けられている.
ある気候変動が,赤色ノイズで説明できないような時間・周波数構造をもつかどうかは,よく扱われるテーマである.赤色ノイズで説明できると,多くの場合つまらんということになる.赤色ノイズで説明できないと,解明するべきなにものか,例えば未知の遅延振動メカニズムがある,ということになる.[au=見延][dt=2001年3月23日][level=2]
赤道反流 (せきどうはんりゅう)
[←先頭へ]
絶対渦度 (ぜったいうずど:absolute vorticity)
相対渦度(ω)と惑星渦度(f)の和,ω+f
[au=見延][dt=2001年04月12日][level=1]
→相対渦度
[←先頭へ]浅水方程式 (せんすいほうていしき:shallow water equations)
浅い流体を一層で近似して得られる支配方程式.流体の下面がフラットなら,
du /dt-fv = -g dh/dx
dv /dt+fu = -g dh/dy
dh /dt+h(du/dx+dv/dy)=0
となる.これに粘性・減衰の効果が加えられることもある.ここで,hは流体の厚さ,他は標準記号法に従っている.
地球流体は幅に比べて圧倒的に薄いので,薄いという近似は理にかなっている.ただし現実の地球流体は成層しており,その効果を考えるには2層・多層や連続成層というモデルを用いる必要がある.
浅水方程式が重要なのは,2層や連続成層でも線形の範囲で記述できる物理過程であれば,鉛直方向にモード展開することで浅水方程式に帰着することである.つまり,2層・多層・連続成層の振る舞いの基本の相当部分を理解するには,浅水方程式を理解しておく必要がある.[au=見延][dt=2001年3月23日][level=1]
→傾圧モード、 順圧モード、 1層モデル、 1.5層モデル、 変形半径
[←先頭へ]相対渦度 (そうたいうずど:relative vorticity)
回転座標系(つまり地球上)で観測した流速で与えられる渦度.地球流体的には通常,渦度3成分のうちの水平成分ω=∂v/∂x-∂u/∂yを意味する.
[au=見延][dt=2001年04月12日][level=1]
→絶対渦度
[←先頭へ]た |
データ同化 (でーたどうか:data assimilation)
データを数値モデルに効果的に組み込むことで,観測されたデータが無い地点や時間でも高精度の推定を行なおうとする手法の総称.数値モデルを用いない,最適内挿法は通常データ同化に含まれないが,親戚筋といえる.最適内挿法を少々高度にした,カルマンフィルター法はデータ同化法とみなされている.さらに高度な方法としてはアジョイント法もあるけれど,計算量が多いし変なバイアスがかかることもあるように感ぜられる.単純なニュートニアン・クーリング型で緩和させる方法はナッジングと呼ぶらしいが,GCMなどではこのような単純な方法が好まれる,ような気がする.いずれにしても,数値モデルに変なバイアスがかかっていればその影響を受けるので,最適内挿法などのように数値モデルを用いない方法よりも常に良い推定値を与えるとは限らない.ただし,十分データがあれば多少モデルが悪くとも,データ同化の法が良い推定値を与える印象を持っている.
[←先頭へ]テレコネクション (てれこねくしょん:Teleconnection)
テレコネクションとは,遠く離れた場所の,気象・気候変動が似ていること.もう少し厳密に言えば,地球上の遠く隔たった場所で,時間的な気象の変数が有意な同時相関をもつこと(significant simultaneous correlations between temporal fluctuations in meteorological parameters at widely separated points on earth (Wallace and Gutzler 1981 p. 784). 遠く離れた場所の変動といっても,氷期・間氷期や,太陽放射の変動という,全地球の気温が上がったり下がったりというのは,テレコネクションとは言わない.
アメリカの気候予測センターでは,テレコネクションのHPを提供しており,様々なテレコネクションパターンの図・時系列・解説を提供している.
エルニーニョに伴って,地球のあちこちの気候が変わるということは長く認識認識されていたが,それがロスビー波の波列パターンであることを示した(Horel and Wallace 1981)と,北半球の5つのテレコネクションパターンを同定した(Wallace and Gutzler 1981)の2論文が特に重要.
テレコネクションの理論の主要なものは,大気循環(ハドレー・ウォーカー)の変化,大気のロスビー波だろう.従来熱帯の中緯度への影響という文脈で語られることが多かったが,最近 Holton (1995)は"extratropical pumping"(熱帯外の吸引)という,逆に中緯度が起源で熱帯が引きずり出されるのだという面白い説を出している.
なお,テレコネクション指数の計算方法は,Wallace and Gutzler (1981)(等圧面高度の選ばれた点で計算)と気候予測センターの(Barnston and Livezey 1987の回転EOF)とでは違う.また,非常に似通ったパターンに違う名前がついていることもあるので,注意が必要.
Barnston, A. G., R. E. Livezey, 1987: Classification, seasonality and persistence of low-frequency atmospheric circulation patterns. Mon. Wea. Rev., 115 (6), 1083-1126.
Holton J. R., P. H. Haynes, M. E. McIntyre, A. R. Douglass, R. B. Rood, and L. Pfister, 1995: Stratosphere-Troposphere exchange. Rev. Geophys., 33 (4), 403-439. NOV 1995
Horel, J. D., J. M. Wallace, 1981: Planetary-Scale Atmospheric Phenomena Associated with the Southern Oscillation. Mon. Wea. Rev., 109 (4), 813-829, 1981.
Wallace, J. M., and D. S. Gutzler, 1981: Teleconnections in the geopotential height field during the Northern Hemisphere winter. Mon. Wea. Rev., 109, 784-812, 1981.
→Pacific/North-American Pattern、 Pacific/North-American Pattern (PNA-pattern)
[←先頭へ]トライトン・ブイ (とらいとん・ぶい:Triton buoy)
海洋科学技術センターが開発した,熱帯太平洋(ごく一部インド洋)に展開した熱帯用のブイ.1998年から投入がはじまり,2002年までに予定の18基の展開を終了した.ブイは1年に1回回収し,整備して再設置する.
エルニーニョをモニターするTao/Triton Array の西の1/3くらい(?)を受け持っている.トライトン・ブイは表面での降水量と蒸発の差である水フラックス,また海中での塩分が計れるという,Taoを構成するアトラスブイよりも優れた機能を持っている.
気象センターが気温・相対湿度・気圧・風速・風向・日射・雨量,水中センサーが流速・水温・塩分である.塩分の誤差はリアルタイムの値で0.06 psu, 回収後の補正をかけたもので0.03 psuである.webを通じては,JAMSTECのTRITONのHPとアメリカPMELのTAOのHPから入手できる.
他の海でのブイには,大西洋のPIRATE (Pilot Research Moored Array in the Tropical Atlantic) がある.またインド洋でも熱帯ブイの展開が模索されている.
エルニーニョの予測には,海の中の水温偏差をモニターするのがとても大事.暖かい水が西太平洋にたまると,そろそろエルニーニョが起きそうだ,と分かる.数値モデルの発達もあるが,海の中がリアルタイムでモニターできるのが,エルニーニョの予報を非常に向上させている.現時点では衛星などから海の中の水温をモニターすることはできないので,ブイを入れて,そのブイにつけた水温計で計っている.アメリカだけでは大変なので,海洋科学技術センターが熱帯西太平洋を受け持っている.
[au=見延][dt=2002年10月5日][level=3]
δ18O (デルタ・おー・18:delta O18)
酸素同位体.これと通常のO16との比は,水温と塩分とに影響される.主として,水温の指標(逆相関)として使われることが多い.塩分には影響されない,Sr/Ca比の方が水温の指標としては良いという話しもあるが,まだ利用例は少ないようだ.
[au=見延][dt=2001年6月23日][level=3]
太平洋50年変動 (たいへいようごじゅうねんへんどう:Pacific Pentadecadal Oscillation (PPO))
太平洋およびその周辺に見られる50-70年変動で、Minobe (1997 GRL)が50-70年変動を提唱し、Minobe and Mantua (1999 PiO) および Minobe (2000 PiO)がこの用語を用いている。太平洋数十年変動(PDO)はこの太平洋50年変動と20年変動の重ね合わせであるとMinobe (1999 GRL, 2000 PiO)は主張した。Minobe (1999 GRL, 2000 PiO)は20年変動と50年変動が異なる季節依存性を持つことから、この二つの変動は別物であることを示唆した。同様にChao et al. (2000 GRL)も両者が、SSTの異なる空間分布を持つことを示している。50年変動はほぼ北太平洋のみであるが、20年変動は赤道に対象に南北両半球に分布している。Chao et al., (2000 GRL)が用いたSSTデータは、あまり信頼できない1900-2000年のGISSTであるので注意が必要。[au=見延][dt=2001年3月23日][level=3]
[←先頭へ]太平洋(数)十年変動 (たいへいよう(すう)じゅうねんへんどう:Pacific (Inter)Decadal Oscillation (PDO))
北太平洋に見られる大気海洋の数十年変動で、Mantua et al., (1997)によって提案された。アメリカでは非常に多くの注目を集めており、2000年1月のNew York Timesの1面を飾りもした。20N以北のSSTのEOF第一モードで定義される。ただしEOFの計算の前に、地球温暖化の影響を除くために全球平均SSTはさっぴいている。[au=見延][dt=2001年3月23日][level=3]
[←先頭へ]太洋 (たいよう:ocean(s))
太平洋(the Pacific Ocean)、大西洋(the Atlantic Ocean)、インド洋(the Indian Ocean)、北極海(the Arctic Ocean)、南極海(Antactic モcean)を5大洋と呼ぶ.また、太平洋と大西洋を南北で分け、「7つの海」ということもある.南北がつく場合は,the North Pacific, the North Atlantic というようにOceanを略することが多い.おっと南太洋(the Southern Ocean)ってどこに入るんだろう?
太洋以外は付属海(adjacent sea?だっけ)という.付属海は,二つ以上の大陸でかこまれるか,大陸の中深く海が入りこんでいる地中海(mediterranean sea)と,大陸と半島・島などで囲まれている縁海(marginal seas)との二つに分類される.
対馬暖流 (つしまだんりゅう:Tsushima Warm Current (TWC))
対馬海峡を通って日本海に流れ込む,高温・高塩の海流.
[au=見延][dt=2001年3月31日][level=2]
大気の橋 (たいきのはし:atmospheric bridge)
熱帯の変動は,大気のロスビー波を通じて,中緯度の気候に影響を与える.この大気のロスビー波が果たす役割を,atmospheric bridge と呼ぶことがある.この用語は,Lau and Nath (何年だったかな?)が初めて使い,その後よく使われるようになっている.大気のロスビー波がatmospheric bridge の役割を果たすことは,Wallace and Horel (1981だったかな?)が示しており,20年くらい認識されていた.Lau and Nathがうまくやったのは,良いネーミングをつけたことね.[au=見延][dt=2001年3月23日][level=3]
→海の橋、 Pacific/North-American Pattern (PNA-pattern)
[←先頭へ]大気海洋結合モード (たいきかいようけつごうもーど:atmosphere-ocean coupled mode)
大気と海洋とが密接に関連して,一つの現象を作り上げることを指して言う.すなわち,大気が海洋を駆動し,海洋がまた大気を駆動する,というフィードバック・ループが閉じることで現象が生ずるのである.通常大気は海洋を風と熱で駆動し,海洋は大気を熱で駆動する.
理論的には,大気海洋結合方程式系の,固有値・固有ベクトル解を意味する.ただしこれは,通常線形問題として解かれるので,微小振幅解である.数値計算を行なって,大気と海洋が連なって変動していることをうまくとりだせれば,それもまた結合モードと呼ぶことができる.こちらは非線形・大振幅の効果を含めることができるが,モードであることを明瞭に証明するのは,あらかじめモード解しか得られない固有値問題よりはやっかいである.
観測からは,EOF解析によって明瞭な大気と海洋の同時変動が捕らえられた場合には,大気海洋結合モードであると言える可能性がある.ただし,観測データの解析では大気が一方的に海洋を駆動しても,またその逆でも同時変化が生ずるので,このトラップには十分注意しなくてはならない.
[au=見延][dt=2001年11月8日][level=2]
大気海洋相互作用 (たいきかいようそうごさよう:atmosphere-ocean interaction)
大気と海洋がなんか関係を持つことを,広く大気海洋相互作用と言う.さざ波と風との相互作用から,数百年スケールで地球全体の大気と海洋の循環との相互作用まで範囲が広い.
範囲が広すぎるので「...さん大気海洋相互作用の座長をしてくれません?」と頼まれるた場合には,「どういった大気海洋相互作用ですか?」と聞き返さなくては危ない.
[au=見延][dt=2001年11月8日][level=2]
大陸棚上の水塊構造 (たいりくだなじょうのすいかいこうぞう)
大まかに大陸棚を,inner front, middle front, shelf break front という3つのフロントで区分される4領域にわけることができる.
coastal shelf = inner front よりも沿岸側
central shelf = inner front と middle front との間:強い2層構造
outer shelf = middle front と shelf break front との間:特徴は聞き漏らした(誰か教えて to 見延)
shelf break frontより外洋側:外洋
地球シミュレーター (ちきゅうしみゅれーたー)
2002年4月段階で,Linpackというソフトウェアパッケージを用いた性能で世界最高速のコンピューター.体育館1つを占拠するその巨体は,どこかSFチックでさえある.理論性能は40.8TFlops, Linpackでの実行性能は35.1Flopと非常に高い.単体性能が8FGlopsプロセッサ8個で1ノードを構成し,640ノードが集まったのが地球シミュレーターである.各ノード間は高速ネットワーク
地球シミュレータは,海洋科学技術センター・宇宙開発事業団・日本原子力研究所が共同で推進するプロジェクトとして,地球シミュレータ研究開発センターが開発にあたり,製造したのは日本電気(NEC).運用は,海洋科学技術センターの中の地球シミュレータセンターが担っている.両センターへのリンクはここ.
地衡流 (ちこうりゅう:geostrophic current)
コリオリ力と圧力傾度力とがつりあって生じる流れ。式で書くと、
f u = -ρ∂p/∂y, f v = -ρ∂p/∂x
流れの向きを示すのに、北半球では「圧力の高いほうを右に見て流れる」とよく言われる。[au=見延][dt=2001年3月23日][level=2]
→準地衡流
[←先頭へ]地衡流バランス (ちこうりゅうバランス:geostrophic balance)
[←先頭へ]
地衡流調節 (ちこうりゅうちょうせつ:geostrophic adjustment)
[←先頭へ]
遅延振動子 (ちえんしんどうし:delayed oscillator)
遅延の記憶が重要である,振動現象の総称.式で表すと例えば,
du/dt = -a u(t-d) + u -b u^3
である.遅延振動が始めて気候変動分野に持ちこまれたのは,Schopf & Suarez (1988 JAS) で,上の式をエルニーニョが数年毎に生ずることの説明に適用した.このため,エルニーニョ研究では遅延振動子を,狭くSchopf & Suarez (1988) の理論だけに限定して用いられることがある.しかし,その狭義の遅延振動子の対立仮説である,Jin (1997 JCLM) のリチャージ・ディスチャージ理論も上のような式で説明できるという点では,広義の遅延振動子理論の範疇にある.
遅延振動子の概念図を,中高緯度の数十年変動を題材にとって説明しよう.遅延振動子理論では、大気が海洋に影響を及ぼす場所(地点1)と、逆に海洋から大気にフィードバックする場所(地点2)とを考える。両者は同じであっても良い.図では、地点1から地点2に海洋ロスビー波がゆっくりと情報を伝え、地点2から地点1には大気のロスビー波が瞬時に情報を伝えると仮定している。ただし、地点2で海が暖かい(冷たい)と、地点1では逆に大気が海を冷やす(暖める)ように働く。まず最初の段階では、2地点とも海は通常よりも暖かいとしよう。この状態では地点2で暖かい海が大気を駆動して、その影響は大気のロスビー波によって地点1に及び、そこでは大気が海を冷却するように働く。やがて地点1では海洋が通常よりも冷やされ、その影響は地点2に海洋ロスビー波としてゆっくりと伝播して行く。さらに時間が経過して、地点2も通常より冷たくなると、地点2から大気への影響はそれまでと反転し、地点1では海が暖められる。すると地点1からそれまでとは逆符号の暖かい海洋ロスビー波が、地点2に向かって放射される。地点2まで海が暖まると、最初の状態に戻り、一つのサイクルが完結して、次のサイクルが始まる。この説明は一見すると風が吹くと桶屋がもうかるの類の話のようであるが、一定の振動周期を持つ現象が気候システムの中に存在し、かつ太陽活動の変化などの気候システムの外部の要因がその振動をもたらしていないのであれば、このような遅延フィードバックが周期的な変動の発生には必要であるとほとんどの場合に考えられている。
遅延反転フィードバック (ちえんはんてんふぃーどばっく:delay-negative feedback)
[←先頭へ]
長波近似 (ちょうはきんじ:long-wave approximation)
短波と長波がもともと存在する物理システムで,長波のみを取り出す近似のこと.例えば,回転系の浅水モデルでは,混合重力波・短波ロスビー波・長波ロスビー波が存在し得るが,長波近似を行なったと言えば,非分散の長波ロスビーのみを取り出していることを意味する.
[au=見延][dt=2001年04月13日][level=2]
定着氷 (ていちゃくひょう:fast ice)
岸にくっついている海氷のこと.
[←先頭へ]鉄 (てつ:iron)
栄養塩が余っているにもかかわらず,鉄が不足しているために生物生産が制約されている場合がある.例えば,ガラパゴス諸島で20km×20kmで鉄を含んだ水をまいた実験をすると,栄養塩が減ってクロロフィルが増えた.南極では鉄が不足しているので,そこで鉄をまいて生物を増やして,二酸化炭素固定を進めるという乱暴な話も真剣に話されているらしい.
[au=見延][dt=2001年7月06日][level=3]
→栄養塩
[←先頭へ]電脳水族館 (でんのうすいぞくかん)
朝日新聞が主催する,webで見れるお魚たち(だけじゃないけど)の様々な写真.一覧がここ.
[←先頭へ]東韓暖流 (とうかんだんりゅう:East Korean Warm Current (EKWC))
東朝鮮暖流とも呼ばれる.対馬海峡から朝鮮半島の東半島に沿って北に向かって流れる海流.リマン海流とぶつかって,離岸し極前線を構成する.
[au=見延][dt=2001年6月22日][level=2]
特異値分解解析 (とくいちぶんかいかいせき:Singular Value Decomposition (SVD) analysis)
二つの異(例えばSSTと海面気圧)なる多変量間の相関(もしくは回帰)を最大にするパターンを検出手法.単一変数の主用パターンを取り出すのに使われるEOFの2変数版のように使える,と思っておいてだいたいよい.
ちなみに,SVDは本来数学・行列演算の特異値分析と呼ばれる方法である.気候変動のSVDはその本質が相関行列を特異値分解することであるので,単にSVDと呼ばれるようになった.しかし気候変動分野でも行列のSVDを使いながら,上の手法とは違う手法が存在するので,多少混乱を招く呼び方である.混乱しないためには,最後に「解析」をつけるのを忘れないようにしよう.
[au=見延][dt=2001年6月23日][level=3]
→EOF
[←先頭へ]独立成分分析 (どくりつせいぶんぶんせき:Independent Component Analysis)
多変量データ解析の一種で,独立かつガウス分布からはずれたいくつかの時系列と,それに関係する空間分布を同定する手法.ガウス分布から外れる成分を取り出すというアイディアは,自然界の純粋な物理現象の確率密度分布はガウス分布ではなく,様々な確率密度分布の和が大数の法則によってガウス分布になっているのだという前提を持っている.
岩波の統計シリーズの第一巻も独立成分分析であったように,現在様々な分野で注目されているらしく,大気・海洋への適用としては,Mori et al. (2003 GRL submitted)が独立性分析を北極振動に適用したことなどが挙げられる.
データの分解方法は,元データZ(t,x)を,時間変動T(t)と空間分布X(t)とに,線形的変数分離する Z(t,x)=Sum T(t) X(x) である.この点ではEOF, SVD などと共通である.独立成分分析の具体的な計算では,まずEOFでいくつかのモードを取り出し,その規格化された時系列の線形和によって,最もガウス分布から外れた時系列を導き出す.そして,この最もガウス分布からはずれた時系列の寄与を除いた残差データから,次にガウス分布からはずれた時系列を導き出す.以下同様にして,EOFで取り出したモードの個数まで独立成分を求めて行く.最初のEOFでいくつのモードまで選ぶかというのは,大体数個のオーダーのようである.たとえば,上の Mori et al. では,3個選んでいる.
なお,独立成分分析で言う独立とは,
2つの事象1, 2の確率密度関数が各々P1, P2 であるときに,その二つの事象が同時に生ずる確率が
P_mix(x1,x2)=P1(x1) P2(x2)
と書けるという立場である.一般に独立であれば無相関だが,無相関でも独立とは限らない.気候変動研究では多くの場合,無相関と独立とを等価であるかのように表現することが多いので,独立成分分析にはの独立とはより厳格な意味で用いられているので,注意が必要である.
なかなか面白い方法だが,前提である「自然界の<純粋な物理現象>はガウス分布をしない」,が注目する現象に対して妥当かどうかは注意が必要である.例えば,中緯度の大気は本質的にStochasticであるけれど,空間パターンは大気の固有モードとして固定される,というのは広く使われる作業仮説では,大気の固有モードという,ある種の物理現象を扱っているが,その時系列の確率密度分布はガウシアンであってもよい.つまり大気の固有モードは,独立成分分析で言うところの「純粋な物理現象」ではない.よって,大気の固有モードの時系列がガウス分布でもいいということを認めるのであれば,その固有モードを取り出すために独立成分分析を行なうのは不適切ということになる.
テキストはIndependen-componen analysis. (John Wiley) by Hyvabnen et al. というのがよいらしい(森さん推薦).その著者によるチュートリアルは,http://www.cis.hut.fi/aapo/papers/IJCNN99_tutorialweb/node1.htmで公開されており,和訳もあるそうだ.
な |
ネクトン (ねくとん:nekton)
海の中を自分で泳ぐ生物.イワシも鯨もネクトン.反対語はプランクトン.
[au=見延][dt=2001年6月22日][level=2]
ネスティング (ねすてぃんぐ:nesting)
荒い解像度を持つ大領域の数値モデルの中に,細かい解像度を持つ狭い領域の数値モデルを埋め込んで,狭い領域に限っては高解像度の数値計算を可能とする技術.広い領域のモデルの情報を狭い領域のモデルに入れるだけで,その逆を行なわないone way nestingと,両方向に情報を交換するtwo way nestingとがある.
[au=見延][dt=2001年04月01日][level=2]
ネプチューン効果 (ネプチューンこうか:neptune effect)
Greg Holloway が提唱した海底地形の凸凹と中規模渦の相互作用が、統計的に平均して方向に流れをつくるという効果。
ベータ効果(地形性でも惑星でも)がなければ、統計的には高気圧が山の真上に来る.しかし、ベータ(ロスビー波)のため、高気圧が山の西側(地形性ベータなら浅い方を向いて左側)に偏りがちで、そのため西向き(浅い方を向いて左向き)の圧力勾配が出来るという話しだったらしい。さらに地衡流の関係から,浅い方を右に見る流れができる.
"Neptune effect" という名前は Ocean Modellingというニューズレターで彼自身が命名している.このニューズレターに載っている漫画では、海の神 Neptune が trident (三又の槍) で海水をつついて、風が作る圧力勾配とは逆の圧力勾配を作って、逆向きに海流を流している。このTrident は海底地形の凸凹を表している。この漫画で言いたいのは,風から推定される流れとは逆向きの流れが観測されることがあって、それはネプチューン効果のせいなのだ、ということだろう。
Holloway, G. 1986. A shelf wave/topographic pump drives mean coastal circulation. Part 1. Ocean Modelling, No.68.
Holloway, G, 1992: Representing topographic stress for large-scale ocean models. J.Phys.Oceanogr., 22, 1033-1046.
[au=古恵@CCSR & 見延][dt=2001年6月23日][level=3]
南極周極波動の理論 (なんきょくしゅうきょくはどうのりろん:Theories for ACW)
南極周極波動の理論は,Qui & Jin (1997 GRL), White et al. (1998 JGR), Talley (1999 JPO), Baines and Cai (2000, JCLM)などによって研究されて来た.これらの理論の本質的な相違は,大気が海洋表面水温(SST)の偏差にどのように応答するかである.Qui & Jin は等価順圧な大気を仮定し,表面気圧は表面気温に比例すると仮定した.この仮定がなぜ成り立つのか私には分からないけれど,等価順圧のよりcompleteなモデルを用いているBaines and Cai (2000)の結果でもそうなっているので良いのだろう.一方White et al. (1998 JGR)は,大気加熱が大気の鉛直移流でつりあうという熱帯ではよく使われるが,中高緯度では旗色の悪い大気応答を仮定している(Palmer and Sun 1985はただしこのような解も特定のスケールでは可能なことを示した) .彼らがこのような大気の応答を仮定した理由は,NCEP/NCARの再解析データがそうなっていたからのようなので,意味が無いわけではない.
これらのモデルでは海氷の効果は無視されているし,南北方向は波動解を仮定されているので,その辺りが今後早くに発展するだろう.
[au=見延][dt=2001年06月07日][level=2]
南極周極波動 (なんきょくしゅうきょくはどう:Antarctic Circumpolar Wave (ACW))
White and Peterson (1996 Nature)が発見した,南極の周囲を2波長の波が8年かけて(周期は4年)一周する現象.そのシグナルは,海洋表面水温, 海面気圧, 南北風速,氷の張りだし,に見られる.
[au=見延][dt=2001年06月07日][level=2]
南方振動 (なんぽうしんどう:Southern Oscillation)
エルニーニョに伴って生じる、熱帯太平洋の東西で気圧が逆符号でシーソーのように動く変動。[au=見延][dt=2001年3月23日][level=1]
[←先頭へ]南方振動指数 (なんぽうしんどうしすう:Southern Oscillation Index (SOI))
タヒチとオーストラリア・ダーウィンの海面気圧偏差の差.気圧偏差を各々の標準偏差で割った後に差をとる場合が多いが,標準偏差で割らずに差を取る人もいる.ENSOの指標としては,他にNino3(4?)SSTも使われる.[au=見延][dt=2001年3月23日][level=2]
[←先頭へ]二十年変動 (にじゅうねんへんどう:Bi-Decadal Oscillation)
二十年変動は、全球に分布し、北太平洋で最も強い振幅を持つ。この変動の原因はよくわかっていないが,赤道についてSSTがそれなりの対称性を示していることから,熱帯に起源を持つのではないかという意見が強い.
Minobe (1999 GRL, 2000 PiO)は20年変動が太平洋50年変動とともに,欧米を中心として注目を集めている太平洋(数)十年変動の重要な成分であることを示した.また,最近Minobe et al (2001 JCLM submitted)は,20年変動は02世紀を通じてその構造を変えており,特に北太平洋セクターでは1920-1950年の間に南下したことを示した.構造変化のアニメーションを,ここで参照できる.このアニメーションは20年変動の包絡線の構造変化を示している.
[au=見延][dt=2001年06月07日][level=3]
→十年変動、 太平洋(数)十年変動、 太平洋50年変動、 準十年変動
[←先頭へ]日本海固有水 (にほんかいこゆうすい:Japan Sea Proper Water)
日本海の300mよりも深いとこを占めている,1℃以下の水塊.塩分は34-34.1パーミルだったと思う.また,日本海固有水を細かく見ると,2400m程度に温位勾配の不連続面があり,この不連続面の上は日本海深層水,下は日本海底層水.底層水では温度の鉛直勾配がCTDの検出限度以下.この特徴は,日本海のなかのどこの海盆かによらない.
日本海固有水の綺麗な図つきの解説が,(財)環境地質科学研究所で提供されている.
日本海固有水を最初に命名したのは,Uda (1934)だと思う.
Uda, M., 1934: The results of simultaneous oceanographic investigations in the Japan Sea and its adjacent waters in May and June (in Japanese). J. Imp. Fish. Exp. Sta., 5, 57-190.
[au=見延][dt=2002年6月7日][level=2]
日本海上部固有水 (にほんかいじょうぶこゆうすい:Upper portion of the Japan Sea Proper Water (UJSPW))
日本海の300m以深に分布する固有水の上の方の部分.密度でいうと27.32-27.34σ_θ (Sudo 1986 Prog. Oceanogr.). 生成域は,Senjyu and Sudo (1994, J. Oceanogr) が136E以西,40-43Nと同定.一方Watanabe et al. (2001, JGR)は日本海上部固有水とほぼ同じ密度の27.30-27.33σ_θの水(High Salinity Intermidiate Water)が北海道の西のシベリア沿岸で生成されることを示した.
日本海上部固有水という名前をつけたのは,Sudo (1986).
Sudo, H., 1986: A note on the Japan Sea Proper Water. Progress in Oceanography, 17, 313-336.
[au=見延][dt=2001年09月1日][level=3]
日本海底層水の滞留時間 (にほんかいていそうすいのたいりゅうじかん:resident time of Japan Sea Bottom Water)
Gamo and Horibe (1983) がΔC14で計測したところ,日本海固有水の滞留時間は300年.A. Chan は100年くらい,トリチウムを使ったYutaka Watanabe によるとやはり100年くらい.トリチウムの方が水自体の性質をよく示している.ま300年も100年も大して違いが無いという考え方もできる.
[au=見延][dt=2001年8月31日][level=3]
日本海洋学会 (にほんかいようがっかい)
日本の海洋物理・化学・生物を束ねる学会.HPはここ.
[←先頭へ]熱フラックス,バルク公式 (ねつふらっくす,ばるくこうしき:bulk formular for heat fluxes)
大気海洋間の熱フラックスを,次元解析からえいやっと求める式.
[au=見延][dt=2001年04月01日][level=1]
熱フラックス,大気海洋間の4成分 (ねつふらっくす,たいきかいようかんの4せいぶん:four components of heat flux between atmosphere and ocean)
大気と海洋で交換される熱フラックスは,短波放射 (short wave radiation),長波放射 (long wave radiation),顕熱(sensible heat),潜熱(latent heat)の4つである.
[au=見延][dt=2001年04月01日][level=1]
熱フラックス (ねつふらっくす:heat flux)
単位面積を単位時間に通過する熱の量.
[au=見延][dt=2001年04月01日][level=1]
熱塩循環 (ねつえんじゅんかん:thermohaline circulation)
熱と塩の不均等が駆動力となって生ずる循環.全球の熱塩循環は,コンベヤーベルトとして知られている.熱塩循環と対比されるのは風成循環.熱塩と風成が相互作用して生ずる循環もあり,最近様々な研究がなされている.
[au=見延][dt=2001年7月25日][level=1]
波の分散関係 (なみのぶんさんかんけい:dispersion relation of waves)
波の波数と周波数の関係を分散関係という.波動論の第一の目的は,分散関係を明らかにすることである.
[au=見延][dt=2001年04月13日][level=1]
波の分散性 (なみのぶんさんせい:dispersion)
波の位相速度が波数に依存して変化する場合,分散性があるという.分散性が無い波のことは,非分散の波とも言う.沿岸ケルビン波・赤道ケルビン波・重力波は非分散である.中緯度ロスビー波は分散性を持つが,長波の極限では非分散となる.また,赤道ロスビー波は南北モード毎に非分散であったと思う(記憶があやふやですみません).
位相速度の波数に依存するということは,長波長成分と短波長成分が異なるスピードで伝わるということなので,一般に波の形が(三角関数波以外は)保たれない,すなわち波がバラけてしまう.このことから,「分散」という用語が当てられているのであろう.
分散性を持つ(持たない)波では,群速度と位相速度は一致しない(一致する).
分散性波動のアニメーションがここで見れる.個々の波が右に進み(位相速度),波の包絡線が左に進んでいる(群速度).
[au=見延][dt=2001年04月13日][level=1]
は |
ハイドローリックコントロール (ハイドローリックコントロール:hydrolic control)
[←先頭へ]
ハイブリッド大気海洋結合モデル (はいぶりっどたいきかいようけつごうもでる:hybrid atmosphere and ocean coupled model)
一般に数値モデルにおいて大気の方が,海洋よりも計算量が大きい.そこで,大気をもっと計算量が少なくてすむようにすれば,計算が楽じゃあないか,ということで大気を統計的な関係で表現するということがしばしば行なわれる.例えば,SSTと風との関係をSVDで同定し,海洋モデルで表現されるSSTに対して,統計的に推定される風を海洋モデルに与えるというようにすればよい.しかし,統計モデルは因果関係を区別できないので,この種のモデルの利用には注意が必要である.
熱帯では多くの場合,SSTは大気を動かす駆動力であり,海洋内部の応答がSSTを決めると考えられている.この場合は,ハイブリッド大気海洋結合モデルを使って良い.しかし,中緯度のSSTは大気強制(熱フラックス)によって駆動される分が相当程度ある.つまり大気が海洋を駆動しているのであって,その逆ではない.この場合は,ハイブリッドモデルを使ってはならない.簡単にハイブリッドモデルの適用可能性をテストするには,SSTと大気への熱フラックスの相関マップを求めるとよい.SSTが高い場所で大気に熱が出ていればハイブリッドモデルは利用できる,そうでなければ利用できない.Saravarannは2000年のNCARの夏の学校で,Xu et al. (1998 JCLM)を間違った例としてあげている.
[au=見延][dt=2001年7月03日][level=3]
パラスフロート (ぱらすふろーと)
中層フロートの一種.
[au=見延][dt=2001年04月04日][level=3]
ピンクノイズ (ぴんくのいず:pink noise)
[←先頭へ]
ブッソル海峡 (ぶっそるかいきょう:Bussol striat)
オホーツク海と太平洋を結ぶ最も主要な海峡(3000m)。ついで深いのはKruzensherna strait。 クリル諸島の他のギャップは1500m以浅。
[←先頭へ]プロファイリングフロート (ぷろふぁいりんぐふろーと:profiling float)
滞在深度におおむねとどまり,一定時間ごとに表面に浮上・データを送信して,再び滞在深度に沈む観測フロート.浮上サイクルは10日,浮上と沈降にそれぞれ6時間,表面滞在時間は11時間.水温・塩分を多数の深度で測定する.ARGO計画で利用されている.
→ARGO計画
[←先頭へ]ベータ (べーた:beta)
コリオリパラメータの南北微分,β=d f/d y.
実際に計算する場合には,β=(1/R)2Ωcos(θ), で計算する.ここでRは地球の半径(6400km),Ωは地球の角速度(2π/86400sec),θは緯度である.
[au=見延][dt=2001年11月8日][level=1]
ベーリング海 (べーりんぐかい:Bering Sea)
太平洋の北に位置する縁海で,カムチャッカ半島,アラスカ,?諸島によって囲まれている.ベーリング海の北端はベーリング海峡によって,北極海のチャクチ海と結ばれている.ベーリング海は縁海として,北極海・地中海についで,3番目に大きい.
海底地形および主要な海流は,アメリカNOAA/PMELのweb siteで紹介されている.
[au=見延][dt=2001年8月31日][level=2]
ベーリング海グリーンベルト (べーりんぐかいぐりーんべると:Bering Sea Green Belt)
ベーリング海の深い海盆を取り囲むように存在する,生物生産の高い領域.
Springer et al. (1996)が提唱した.
Springer, A. M., C. P. McRoy, and M.V. Flint. 1996. The Bering Sea Green Belt: Shelf edge processes and ecosystem production. Fisheries Oceanography 5, 205-223.
ヘクトパスカル (へくとぱすかる:hPa)
気圧の単位.1ヘクト・パスカルは100パスカル(Pa=N/m^2).
気象の世界では長くミリバールが使われていたが,mやkgを基準にするSI単位系を使うという世界的な流れのなかで,cmやgを基準にするcgs単位系のミリバールをやめることになった.でも昨日まで1000ミリバールといわれていたのが急に,10万パスカルですなんていわれると困る.そこで,100を意味する接頭語のヘクトをつかって,移行をスムーズにすることにした....のだろうたぶん.
ホップ分岐 (ほっぷぶんき:Hopf bifurcation)
方程式の係数を変化させていくと,定常解から振動解が生じる分岐.
[←先頭へ]東樺太海流 (ひがしからふとかいりゅう:East Sahaline Current)
樺太(サハリン)の東を南に流れる海流.表層で0.3-0.4 m/s程度の速度を持つ.
[au=見延][dt=2001年3月31日][level=3]
白色ノイズ (はくしょくのいず:white noise)
スペクトルが周波数によらないノイズ.全ての周波数が同程度のパワーを持つ光は白色なので,そこからこう呼ばれている.
[au=見延][dt=2001年6月23日][level=2]
標準の変数表記 (ひょうじゅんのへんすうひょうき:standard notations)
海洋・気候業界では、標準で次のような変数の記号法が用いられる。特に不都合がない限り従う方が、分かってもらいやすい。
c: 位相速度.または定数.
f: コリオリパラメータ.
g: 重力加速度.
h: 層の厚さ.または表面変位.
i: 虚数単位.または、離散変数.
j: 離散変数.
k: 波数.または東西方向の波数.
l: 南北方向の波数.
m: 鉛直方向の波数.
p: 圧力.
q: 比湿.
r: 距離.特に極座標の原点からの距離.
t: 時間.
u: 東向き(もしくはxの方向の)流速
v: 北向き(もしくはyの方向の)流速
x: 東向きの距離
y: 北向きの距離
z: 鉛直方向の距離,私は上を正に取るのが好き.
omega: 角周波数,周波数,大気の等圧面座標系での圧力面の鉛直速度?
[au=見延][dt=2001年3月23日][level=1]
→ベータ
[←先頭へ]風成循環 (ふうせいじゅんかん:wind-driven circulation)
海の表面を吹く風によって与えられる風応力によって駆動力される循環.亜熱帯循環や亜寒帯循環などはこれで生ずる.風成循環に対比されるのは熱塩循環.
[au=見延][dt=2001年7月25日][level=1]
→熱塩循環
[←先頭へ]偏差 (へんさ:anomaly)
気候値(天気予報の言葉で言えば平年値)からのずれ.例えば,ある場所の1月の気温の平年値が3℃だとして,ある年には4℃だったなら,偏差は+1℃になる.
気候変動の議論は,ほとんど偏差についての議論だ.寒冬とか暖冬も偏差の表現ね.
[au=見延][dt=2001年3月23日][level=1]
変形半径 (へんけいはんけい:deformation radius)
ロスビーの変形半径とも言う.重力波の速度/コリオリパラメータで定義される.例えば浅水方程式なら,sqrt(gh)/f.
これよりも大きな現象ではコリオリ力が無視できない.
[au=見延][dt=2001年6月23日][level=1]
北極海の鉛直構造 (ほっきょくかいのえんちょくこうぞう)
大体分けると
0-50 m: mixed layer
50-200 m halocline water
300-500 m Atlantic water (warm)
1000 m: upper deep water
みたい.
[au=見延][dt=2001年3月31日][level=3]
北極振動と北大西洋振動 (ほっきょくしんどうときたたいせいようしんどう)
北極振動が提案されるまでは,北大西洋振動が北半球のEOFの第一モード,つまりもっともエネルギーの大きな変動であるといわれていた.しかし北極振動の北大西洋セクターは,北大西洋振動と非常に共通する構造を示している.そこで北大西洋振動は,北極振動のサブセット(部分集合)であるという言い方もなされる.そう言われてこれまで世界で一番主用な変動を研究してきたんだと言ってきた,北大西洋振動の研究者が面白いわけがない.特に,北大西洋振動は,アメリカ東海岸やヨーロッパという,今日の気候科学をリードしている人たちが大勢研究してきたものなのだ.そこで,当然のように北大西洋研究者からの反撃があり,北極振動は見かけのものでしかない,という議論もある.この急先鋒の一人はNCARのClare Deser だったりするのだけれど,彼女は北極振動の提唱者のWallace 教授の弟子というのも興味深い.北極振動は北大西洋の研究者にとって面白くなくても,北極の研究者にとってはまたとないキャッチフレーズなので,北極研究者はどしどしこの用語を使っている.
海の表面温度を固定して走らせる大気のモデル実験でも,北極振動と同様の空間構造を持つ変動が見出されているので,北極振動が大気の固有モードとして存在し得る,ということには疑問の余地はない.ただし地球上でつまり大気・海洋が結合し変動を生じさせる状況下で北極振動が北大西洋振動以上に重要かどうかは,まだ明らかではない.海洋の寄与が大きな長期変動については,北極振動よりも北大西洋振動が本質的なのかもしれない.ただし,この辺がはっきりするのは,北極振動/北大西洋振動の長期変動のメカニズムが明らかになる必要がまずあるだろう.現在のところ多数のメカニズムが提案されているけれど,どれが正しいのかあるいはどれも正しくないのかについては意見の一致は無いし,2・3年のうちに意見の一致がみられるとも思えない.[au=見延][dt=2001年3月23日][level=3]
北極振動 (ほっきょくしんどう:Arctic Oscillation (AO))
北極を中心とする海面気圧のある符号の偏差が、逆符号の北大西洋と北太平洋での海面気圧偏差に伴われる変動。北半球20N以北で月毎海面気圧偏差ののEOF第一モードとして定義される。アメリカ・ワシントン大学の博士課程の学生だったThompsonと全米アカデミー会員でもある泰斗のWallaceが組んで,Thompson and Wallace (1998 GRL)の論文で提唱した。Thompsonの解説ページがここ.
なにしろ第一モードということは,一番説明するエネルギーが大きく,重要というわけだから,大きな注目を集めている.日本でも,2000/2001年の冬(この表記は2000年の終わりから2001年のはじめにかけての冬という意味ね)が,ここ10年ではもっとも寒かったのは,北極振動のためだとされて,2001年3月に朝日新聞などなどで報道された.新聞の解説は,北極圏の上空で寒気を貯め込んでいる極渦が強いと日本には寒気が下りてこなく,極渦が弱いと寒気が降りてくるので日本が寒冬となるというものだった.
もう少し正確に北極振動と極東アジアの気温の変化を調べると,次のように言える;北極振動は同符号の変動をユーラシア大陸のシベリア高気圧の北部に,逆符号の振動を太平洋のアリューシャン低気圧の北部に持る.そこで,北極振動が弱くなるとシベリア高気圧が強く,アリューシャン低気圧も強くなり,高気圧を右に見る地衡風が北風となるので,極の寒気が移流されて北日本を含む極東アジアは冷たくなる.
北極振動にだいたい十年程度の変動(準十年変動)が1970年以降見られており,この変動はヨーロッパから北海道まで広い範囲の気温に影響することが知られている.日本の気温との詳しい解析はXie et al., (1999, JMSJ)でなされている.[au=見延][dt=2001年3月23日][level=2]
→Madden-Julian oscillation、 北極振動と北大西洋振動、 EOF、 北大西洋振動
[←先頭へ]ま |
南赤道海流 (みなみせきどうかいりゅう:South Equatorial Current)
[←先頭へ]
ら |
リマン海流 (リマンかいりゅう:Liman Current)
日本海のシベリア沿岸を南下する海流.東鮮暖流とぶつかって離岸して日本海を横切る極前線を構成する.
[au=見延][dt=2001年6月23日][level=2]
→東韓暖流
[←先頭へ]レッドフィールド比 (れっどふぃーるどひ:Redfield ratio)
レッドフィールド比:炭素:窒素:リン比のこと
ロスビー数 (ろすびーすう:Rossby number)
運動方程式のコリオリ項と非線型項との大きさの比,Roで表すことが多い.
Ro=U/(f L)である.ここで,Uは速度の大きさ,Lは現象のスケール,fはコリオリパラメータの大きさである.
ロスビー数が1よりも小さいなら,非線型項はコリオリ項に比べて小さい.海洋内部領域では,ロスビー数の大きさは10^(-4)程度である.
[au=見延][dt=2001年4月11日][level=1]
ロスビー波 (ろすびーは:Rossby wave)
背景渦位の勾配によって生ずる大気海洋の波動。
コリオリパラメターが緯度によって変化することでできる渦位勾配を背景場とするロスビー波を「惑星ロスビー波」と呼ぶ。また海底地形の傾きによって出来る渦位勾配を背景場とするものを、「地形性ロスビー波」と呼ぶ。惑星か地形かを明示していない場合は,惑星ロスビー波を意味することが多い.
[au=古恵@CCSR & 見延][dt=2001年6月23日][level=1]
硫化ジメチル (りゅうかじめちる:Dimethylsulfide)
磯の香りのもと.海洋から出る硫黄を含んだ化合物の中で最も量が多い.火山よりも多く,人為起源の硫黄化合物と同じくらい?
DMSは大気中で対流圈エアロゾルとなって,雲の核になるなどして,地球の気候に影響を与える可能性がある.
植物プランクトンがDMSの前駆物質であるDMSPを作る.DMSPの量は,植物プランクトンによって異なり,円石藻は珪藻よりもDMSPを多く作る.
わ |
惑星渦度 (わくせいうずど:planetary vorticity)
コリオリパラメータ,f,のこと.周辺渦度(ambient vorticity)とも呼ぶ.
渦位が(f+ω)/hとなるので,相対渦度に対してこのように呼ぶ.
[au=見延][dt=2001年6月21日][level=1]