北海道大学 大学院理学研究院 自然史科学部門 地球惑星ダイナミクス分野 教授。
小樽市出身。1989年北海道大学博士課程(理学研究科)中退、1989から1995年北海道大学(理学部地球物理学科海洋物理学講座)助手、1995から2006年北海道大学大学院理学研究科(地球惑星科学専攻)助手・助教授・教授を経て2006年から現職。研究分野は、気象・海洋物理・陸水学。著書に『レジーム・シフト―気候変動と生物資源管理―』(2007年/成山堂書店)、『理系のためのレポート・論文完全ナビ』(2007年/講談社)などがある。
いつも新しい発見をめざして
見延先生の研究について、できるだけ簡単に教えてください。
「大気と海洋がどう関係しているのか」が一番の研究テーマで、これを「大気・海洋相互作用」といいます。たとえば、黒潮とかメキシコ湾流のような強い流れから、大気にどんな影響があるのか、大気と海洋が数年から数十年のスパンで地球の気候にどんな影響を与えているのか、といったことに興味があります。
少し具体的にいうと、この地球は太陽の熱を受けていますね。大気と海洋は、その熱を運ぶ役割を担っています。大気も海洋も地球上では非常に薄く(気象現象が起こる対流圏は約10キロちょっと、海の平均水深は4キロくらいしかありません)その薄い2つの層が地球をおおっていて、互いに熱をやり取りして,風も海流も生じる。それらの変動をとらえ、明らかにするのが私たちの研究です。
「海洋気候物理学研究室」の特長は何ですか?
一緒にやっている稲津さんの専門は「気象学」で、私は「海洋物理学」から始めて気象学も研究しているというように背景とする専門分野が違います。また稲津さんはコンピュータのシミュレーション、私はデータ解析などが得意です。この研究室の特長は、二人が互いに補い合い、テーマとしている気象・海洋変動について強力にアプローチできることです。
それから、研究室の雰囲気が非常にフランクで、みんな意見が出しやすいこと。研究にはいろいろな発想が重要ですから、これも大切だと思います。
「データ解析」の魅力はどこにありますか?
データ解析の一番の魅力は、新しい「発見」ができることです。いい発見をみつけ出した時は、やった!と思います。また私たちのアイディアが正しいと確証できたとき、逆に最初の考えとは違って思いもよらない面白い結果が得られたときは、非常にうれしいものです。現在、データの多くは広く公開され、自由に使うことができますし、解析手段も多くの研究者が用いているものです。しかし、同じ材料でもどう料理するかで味わいが全く違うのです。
先生は、日本語の指導にも力を入れていますね。
はい。レポートや卒論の書き方を徹底的に指導するので、この研究室で学ぶと、しっかりした日本語が修得できます。自分の意思を正しく文章で伝えるのが、最初から上手という人はめったにいないでしょう。私自身、初めて論文を書いたときはずいぶん苦労しました。近年はメールなどのテキストでやり取りする機会が増え、明快な文章を書けることは、将来どんな仕事につく場合にも必要なスキルです。英語で論文を書くときも、文章の骨格がきちんとしていれば、たとえ英語がヘタでも、国際的に通用します。
最後に、学生のみなさんへメッセージをお願いします。
いつでも「熱意」を持ってください。熱意を持って、真剣になるスイッチを入れられる人は、何事にも立ち向かうことができます。もう一つ、自分の頭でよく考えてください。研究の現場では、一つの方向から考えるだけではなく、こうも考え、ああも考えといろいろな側面から考えて、研究を高めていくことが大事です。これはもちろん難しいことですが、研究以外にも必ず役に立つと思います。